なぜ野球は9回が最適か 7回制が生む“不平等”…甲子園出場監督が指摘「野球離れが進むかも」

2028年春から導入検討の「7イニング制」、高松商業・長尾監督が語る野球の本質
野球は他の競技に比べて、勝敗が決まるまでに長い時間を要する。屋外スポーツであることから酷暑による体への影響も考慮し、高野連は2028年春の選抜大会から「7イニング制」を導入することを検討している。高松商業の長尾健司監督は「導入されれば新たなルールに則って指導するつもりだし、今までにない面白みがあるかもしれない」と話すも、どちらかと言えば「反対やな」と語る。高松商を甲子園に導いた長尾監督が、野球の本質と、9イニングを戦うべき理由を説いた。
検討されている「7イニング制」は、公式戦では2025年秋に滋賀県で開かれた「わたSHIGA輝く国スポ」で初めて実施された。従来の9イニング制と比べると30分から1時間ほど試合時間が短くなることから、出場選手からは疲労の蓄積が少ないというポジティブな意見もあったが、監督や指導者からは、競技の特性が変わってしまうこと、記録の継続性が失われることなどを理由に、ネガティブな反応が多かった。
大きな変化が起きる際には摩擦が生じやすい。新しい制度の欠点を突くのではなく、長尾監督は「野球が9イニングじゃないといけない理由、分かる?」と記者へ質問を投げかけ、100年以上続く「9イニング制」と、それによる教育的意義を説明しはじめた。
なぜ9イニングが最適なのか。長尾監督によると、野球とは得点数を競い、「打率.300に達すれば良い打者と言われ、そのための練習をしている」競技だという。「9イニングの場合、バッターが1試合にフル出場すれば、どんなに素晴らしい投手と対戦することになって抑えられたとしても、(27個のアウトを取られるまでに)1人3回は打席が回る。打率3割を打てるようになれたら(計算上は)ヒットが1本打てるってことやろ」と理由を示した。
「失敗を取り返す機会がなくなって、楽しくないと感じる子が増えるだろうね」
3割打者がフルイニング出場したら、1、2回目の打席でアウトになっても、3回目の打席で“成功する確率”が高い。野球には、サッカーやバスケなどと違って、対戦する2チームに力の差があっても平等に攻撃するチャンスが巡ってくる。これが試合終盤にドラマが生まれる根源でもある。
だが「7イニング制」では3打席が保障されなくなる。「どんどん出塁できれば1人3回打席に立てるけど、ヒットを打てずに抑えられ続けたチームは、上位打線以外のほとんどの打者が2回しか打席に立てなくなる。完全試合は滅多にないけど、(試合中に)失敗を取り返す機会がなくなって、楽しくないと感じる子が増えるだろうね」。
指導者も子どもの成長を感じづらくなり、充実感を失う可能性も考えられる。イニングが短くなることで「野球離れが進むかもしれない」と長尾監督。「審判が言う『ストライク!』って、日本語で『打て!』って意味。だからバッターは絶対に打たないかん。そのためには3打席回らないかんのよ」。バッティングは失敗する確率の方が高い。だからこそスタメン全員に、平等に“成功のチャンス”が与えられることを長尾監督は願っている。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)