豪州を率いる39歳消防士主将 4度目のWBCに臨む意義…支えになる大谷翔平の存在

豪州リーグで歴代1位の安打、本塁打、打点
オーストラリア代表のティム・ケネリー内野手が、現役最後の舞台としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に挑む。39歳で4度目の出場。2018年から主将を務め、今大会を現役最後の大会と位置づけている。オーストラリアのウインターリーグ(ABL)で圧倒的な実績を築き、普段は消防士として働く異色のキャリアを持つベテランが、野球人生の集大成に挑む。
シーズンオフには多くのNPB若手が経験を積む場として知られるABL。その象徴的存在がケネリー内野手である。所属するパース・ヒートには楽天・早川隆久投手(2023年)や黒川史陽内野手(2024年)らが派遣され、経験を積んできた。
ABLでは通算465試合、520安打、65本塁打、259打点がいずれもリーグ歴代1位。リーグ最優秀選手賞を複数回受賞し、優勝にも大きく貢献してきた。まさにリーグを象徴する存在である。
同じく代表の主軸を担うリクソン・ウィングローブ外野手は、その存在感をこう語る。
「ケネリー選手はオーストラリア代表の象徴であり、子どもの頃から彼のように上手くなりたいと願って見ていた憧れの選手です。チームの誰もそのように思っています」
主将として背負う誇り 両親の選択から始まった野球人生
ケネリー内野手の野球人生の原点は両親の判断だった。クリケットではなく、ティーボールから野球を始めた理由をこう振り返る。「最初はティーボールで野球を始めました。球を打つ競技ということではクリケットがオーストラリアでは人気ですが、両親がクリケットは時間が長すぎて退屈だと思ったようで、一日中座って試合を眺めていたくなかったようです。それで1、2時間で終わる野球のティーボールに入れられました」。
2009年からナショナルチーム入りし、プレミア12やWBCなど数多くの国際大会を経験してきた。2018年に主将就任を打診された時の思いも強く残る。「2018年に監督に打診されたときは、非常に特別な気分でした。代表でプレーすること自体が特別ですが、主将として率いることは私にとって非常に大切なことです」。
世界最高峰との対戦こそが、長く現役を続ける原動力でもある。「大谷(翔平)や山本(由伸)といった世界最高の選手たちと対戦できることが醍醐味です」。ケネリー内野手には、もう一つの顔がある。10年以上のキャリアを持つ現役消防士である。その経験がプレッシャーへの向き合い方を変えたという。
消防士として培った覚悟 若手へ託す「恐れない野球」
「消防士の仕事から学んだのは、プレッシャーの捉え方です。野球にもプレッシャーはありますが、それは自分自身でかけているものに過ぎないでしょう。火事の現場に入っていく時、そこにあるのは生き残るための本当のプレッシャーです。それに比べれば、ここはただの野球の試合。プレッシャーはずっと小さいです」
大観衆の舞台も純粋に楽しむべきものだと語る。「WBCのような舞台に立って緊張しないなら、野球をやるべきではないです。でも大事なのはその緊張をポジティブなエネルギーとして使うだと思います」。
2013年大会で初めてWBCに出場した当時、ケネリー内野手は若手の一人だった。「当時は環境に慣れるのに必死で、ベテラン選手から多くを学びながら、ただフィールドに出て野球を楽しんでいました。最高な時間でしたね」
その経験から生まれた主将としての信条がある。「私がフィールドで誰よりも懸命にプレーし、正しい振る舞いをしてリードします。それが若手にとっての指針になります。大切なのは、彼らが自分らしくいられるようリラックスさせてあげることなんです」。
次世代へ伝えたい言葉は明確だ。「ただフィールドへ向かい、楽しみ、決して怖がらないでほしいです。そこで何か特別なことができれば、それは一生消えない特別な思い出になると思いますから」。
前回大会では韓国を破り、オーストラリア史上最高のベスト8進出を果たしたが、準々決勝でキューバに3-4で敗れた。あと一歩で準決勝進出を逃した悔しさは今も胸に残る。「本当に悔しい結果でした。マイアミ行きの飛行機に乗って、準決勝でアメリカと対戦したかったです。でもあの悔しさが『次こそはもう一歩先へ、準決勝へ』という火を灯してくれました。今回のチームはスーパースターがいるわけではないですが、過去の大会と比べても投手陣も野手陣もが揃っており、全員が役割を果たし、戦っていきます」。
大会後はコーチとして野球に携わる展望も描くが、今は最後の大会にすべてを懸ける。
「できるだけ多くの日本のサポーターに応援してほしいです。それがパフォーマンスを後押ししてくれます」。オーストラリア野球の象徴として、その背中が指し示す先は、まだ見ぬ世界の頂だ。
(「パ・リーグ インサイト」竹林慎太朗)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)