なぜ侍Jは“110キロ台チェンジアップ”打てず? 「球速ではない」…サトリアに備わった“投手の生命線”が「素晴らしい」|解説者の眼

  • 武田一浩(聞き手:尾辻剛) 2026.03.11
  • 海外
侍ジャパン打線を手玉に取ったチェコ代表のオンジェイ・サトリア【写真:加治屋友輝】侍ジャパン打線を手玉に取ったチェコ代表のオンジェイ・サトリア【写真:加治屋友輝】

第1回WBC投手コーチの武田一浩氏がサトリアの投球を分析

 思わぬ大苦戦を強いられた。野球日本代表「侍ジャパン」は10日、東京ドームで行われた第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド、チェコ戦に9-0で勝利。8回に大量得点して4連勝で準々決勝へと向かうが、すでに敗退が決まっている相手に7回まで打線が無得点と苦しめられた。

 プールCの1位突破が決まっていたこともあり、大谷翔平投手や鈴木誠也外野手はベンチスタート。これまで出番が少なかった選手を中心に起用したが、まさかの展開が待っていた。チェコ代表は、前回2023年のWBCでも日本戦に登板したオンジェイ・サトリア投手が先発。得意のチェンジアップを軸とした投球に、打線が翻弄されたのだ。

 直球の球速は120キロ台。配球の半分以上が110キロ台のチェンジアップの投球を、日本を代表する打者が捉え切れない。現役時代にはNPB通算89勝をマークした右腕で、NHKのMLB中継などで解説を務めている野球評論家・武田一浩氏は「きょうの試合はチェコの先発投手が良かった」と称えた上で、侍ジャパンが苦戦した原因に言及した。

「球は速くないけど、腕がしっかり振れています。特にチェンジアップの時の腕の振りが素晴らしい。カーブもいいし、変化球で全く腕の振りが緩まない。あれだけ腕を振って、うまく球を抜ければ、打者はなかなか打てません」

 初回、佐藤輝明内野手が直球を叩いて二塁打を放ち、1死二塁の好機を築いたが、3番・村上宗隆内野手はチェンジアップを捉え損ねて中飛。続く吉田正尚外野手もチェンジアップに体勢を崩され、右飛に倒れた。

 2回、先頭の岡本和真内野手はカウント1-1からチェンジアップを2球続けられると、全くタイミングが合わずに、つんのめるように空振り三振。2大会連続で出場している日本人メジャーリーガーが次々と手玉に取られた。

 4回1死二、三塁の絶好機もチェンジアップを捉えられず無得点。5回まで毎回安打を放ちながら、要所で決め球に封じられゼロ行進が続いた。

降板時に充実の表情を浮かべるサトリア(中央)【写真:加治屋友輝】降板時に充実の表情を浮かべるサトリア(中央)【写真:加治屋友輝】

日本相手に7回まで0-0「チェコにとっては歴史的な試合だった」

 投手は変化球を投げる際、球を抜いたり手首をひねったりするため、直球に比べて腕の振りが緩むケースが多々ある。だが、サトリアは全くそういうそぶりを見せず、淡々と腕を振って投げ続けた。

 今大会で代表を退く29歳右腕について、侍ジャパンが初代王者となった2006年の第1回WBCで投手コーチも務めた武田氏は「あのチェンジアップは、なかなかの魔球だよ。日本で投げればいいのにと思います」と評価する。NPB入りしても活躍できる可能性を感じ取っており「(NPBでも)通用すると思います」と続けた。

 投手にとって大事な要素は「球速ではありません」と力を込める。「コントロールと、どれだけ腕が振れるかが大事なんです」。テンポよく、制球よく無四球で投げ込んできたサトリアに5回途中まで抑えられたことで、相手投手陣を勢いづかせてしまった。

「日本を相手に7回まで0-0。チェコにとっては歴史的な試合だった」。そう評する一因はサトリアの投球にある。投手に必要なのは、しっかりした腕の振りと制球力。決勝トーナメントで強豪に挑む侍ジャパンの投手陣には、連覇に向けていいヒントになったかもしれない。

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