盗塁王4度の鷹スピードスター、周東の進化した打撃 四球増と三振減で示した新境地

出塁重視へ変化した打席アプローチ
侍ジャパンにも選出されたソフトバンクの周東佑京外野手は、2025年に過去最高の打撃成績を残した。2017年育成ドラフト2位でプロ入りし、類まれな脚力を武器にこれまで盗塁王4度、ゴールデングラブ賞2度を獲得。ただ守備と走塁での貢献度が極めて高い一方、打撃面の貢献は限定的だった。しかし昨季は規定打席には届かなかったものの、打率と出塁率がキャリア最高を記録。日本シリーズでは1試合5安打のシリーズ新記録を樹立するなど、打撃でも強烈なインパクトを残した。では、打撃は具体的に何が変化したのか。
注目したのは三振割合と四球割合である。どちらもリーグトップクラスではないものの、いずれもキャリアベストを記録。これが打率と出塁率の向上につながったといえる。まず四球の増加に注目し、関連するデータからその背景を整理する。
最初に確認したいのは、各打席2球目までのスイング率である。2023年、2024年の周東はリーグ平均程度の数値で、さらにそれ以前には40%台のシーズンもあるなど、浅いカウントからスイングを仕掛ける傾向が強かった。ところが2025年はスイング率が低下し、より慎重な打席アプローチへと変化していた。
もう一つ、スイングの積極性を示すデータがある。ボールが先行した打者有利のカウントにおけるスイング率だ。この数値も2球目までのスイング率と同様の推移を示し、いわゆるバッティングカウントと呼ばれる好機でも慎重な姿勢を崩さなかった。本人の意図は断定できないが、2025年は「塁に出ること」をより重視した打席アプローチだったと考えられる。
追い込まれても三振しない打撃の進化
実際、2025年はカウントが3ボールまで進んだ打席が増加した。スイングアプローチの変化によって、例年より四球で出塁する機会を多く作り出した形である。チームが得点を奪う上で走者の存在は極めて重要であり、トップクラスの走塁能力を持つランナーであればその価値はさらに高まる。周東は自らの武器である脚力を最大限に生かす形で出塁機会を増やしていた。
一方で、カウントを深くする打席アプローチにはリスクもある。2ストライクに追い込まれやすくなる点だ。2025年は2ストライクとなった打席の割合が53.3%でキャリア最高となり、三振リスクの増加が予想された。しかし実際の三振割合はむしろ低下していた。
その要因の一つが、追い込まれた状況でのコンタクト能力の向上である。近年は2ストライク後のコンタクト率が上昇しており、投手が三振を狙って投じる決め球にも対応できる場面が増えている。
さらに、スイング率低下の傾向は2ストライク時にも見られた。2025年は追い込まれた状況でもスイング率が下がっており、その結果として見逃し三振は増加した。ただ同時にボールゾーンスイング率も低下。コンタクト率の上昇と合わせて空振り三振が大幅に減少したことで、見逃し三振の増加を補い、全体の三振数は減少した。
スイングアプローチの変化とコンタクト能力の向上により、三振減少と四球増加を両立させた周東。打撃成績向上の要因はそれだけではない。体重を増やすなど強い打球を生む取り組みも続けている。これまで築いてきたスタイルを失うリスクを恐れず、自身の打撃を見つめ直したことがキャリア最高の打撃成績につながった。
今年1月には大型契約を締結し、3月に始まったワールド・ベースボール・クラシック1次ラウンドのチェコ戦では3ランを放った。進化を続けるソフトバンクのスピードスターは、日本に歓喜の瞬間をもたらす存在として、WBCでも走攻守すべてで持ち味を発揮する。
(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)