野球人口減…危機感が呼んだ“町おこし” 選抜敗戦、直後に漏らした「有名にしたかった」

阿南光のナイン【写真:加治屋友輝】
阿南光のナイン【写真:加治屋友輝】

阿南光、2年ぶり勝利届かず…地元には「野球のまち推進課」

 野球のさらなる発展に“町”を挙げて取り組んでいる。第98回選抜高校野球大会は19日、甲子園球場で開幕した。大会初日の第2試合は阿南光(徳島)が5回に一度は同点に追いついたものの、中京大中京(愛知)に1-3で競り負けた。ベスト8入りした2024年以来となる2年ぶりの勝利を逃したものの、一塁側アルプススタンドには多くの観客が詰めかけて大声援。地元の野球熱は高まっている。

 少年少女を含めた野球人口の減少に歯止めがかからない現在。危機感を抱いた阿南市は2010年に「野球のまち推進課」を設置した。高校、大学、社会人チームの合宿招致や野球大会の開催、野球観戦ツアーなど、さまざまな取り組みを行って野球を盛り上げようと奮闘している。

 アルプスで阿南光ナインの奮闘を見守った野球のまち推進課の大川康宏課長は、地元野球界の活性化へ「最近の2年間はティーボールの国際大会も開催しています」と説明。昨年は「とんねるずのリアル野球盤」と同様の試みを初めて実施したそうで「小学生が親子で参加できて、女性でもヒットを打てる。非常に盛り上がりましたし、継続していきたい」と明かした。

 沖縄や大阪など全国から軟式の草野球チームを招いての野球観戦ツアーは「JAアグリあなんスタジアム」で実施。親善試合ではスコアボードの電光掲示板に出場選手名が出て、ウグイス嬢が場内アナウンスするなど本格的な雰囲気で行う。試合後は懇親会を催し「最後は阿波踊りで大歓迎します。凄く盛り上がります」という。

 もちろん、本格的な野球チームも誘致している。近年は京大硬式野球部、近大や大産大の準硬式野球部、京都の山城高のほか、尽誠学園の女子野球部が合宿を行っている。今回の選抜大会に出場している日本文理(新潟)も3月9日から5日間滞在して調整した。

阿南光・小田拓門【写真:加治屋友輝】
阿南光・小田拓門【写真:加治屋友輝】

エース小田「野球に対する愛がとても強い地域」

 高校野球の招待試合も企画。過去には大阪桐蔭や広陵、智弁学園、敦賀気比を招いて全国トップクラスの実力を把握する機会になった。徳島県勢は、過去の選抜大会で優勝5度など一時は野球王国と呼ばれたが、1986年の第58回大会で2度目の日本一となった池田以降は優勝から遠ざかっている。ベスト4まで進出したのは2003年の徳島商が最後。王国復活への一歩として、推進課の取り組みがある。

 阿南市役所の入り口付近には展示コーナーを設置。阿南市出身のオリックス・杉本裕太郎外野手らのサインボールなどプロ野球選手のグッズが並ぶ。定期的に展示品を入れ替えており、現在は選抜大会に合わせて阿南光のコーナーも用意していた。

 少年野球教室も積極的に開催。そんな環境で育ってきた選手が、阿南光の主力となり、大川課長は「甲子園に出てくれて、また物凄く盛り上がっています。ありがたいですね」と目を細めた。

 8回途中まで3失点と粘りの投球を披露したエースの小田拓門投手も少年時代から阿南市で野球と触れ合ってきた1人。「“野球のまち”として頑張っていて、野球に対する愛がとても強い地域です。応援してくれた方もたくさんいる。それに応えて活躍しようと思っていた。勝って阿南を有名にしたかったです」と悔しそうな表情を見せ「絶対に夏に帰ってくるので、それまでに強さを引き出せるように準備したい」とリベンジを誓った。

 地元のサポートを受けながら少しずつ地力をつけてきた阿南光。地域が活性化しているのは間違いない状況だ。野球愛と情熱が高い阿南市への恩返しを誓って、故郷に戻って出直す。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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