「審判がいないから試合できない」 危惧する“後任不足”…高校野球が直面する問題

香川県大会で審判員不足の危機があった【写真:加治屋友輝】
香川県大会で審判員不足の危機があった【写真:加治屋友輝】

香川県高校野球連盟は今春から指導者10人を“審判”として動員

 厳しさを増す夏の暑さは、大会運営にまで影響を与えている。「第98回選抜高校野球大会」の開幕から一夜明けた20日、香川県でも甲子園遠征に出た英明を除く36校による春季大会が開幕した。ダイヤモンドを見渡すと、ほとんどの試合で三塁審だけ白い帽子を被っている。その正体は香川県高校野球連盟がこの春から動員した、硬式野球部を指導し、審判登録がない教員である。

 導入のきっかけは昨夏。審判員が1日で複数の試合を担当することが体調面でも難しく、人数がそろわず試合の延期を検討した。最終的にはどうにか揃え、日程通りに大会を終えたが、同連盟の桑嶋裕二理事長は「雨などの天気や人数不足だけでなく、審判がいないから試合ができないという時代が近付いてきている」と危機感を感じている。

「2年前から検討はしていて、最初は監督や部長にお願いしようと思っていました。だけど、監督は勤務校のチームをみないといけないし、部長は大会の運営に当たらなければならない。学校の仕事もあり、あまり動くことができないんです。若い先生の方が動きやすいので、監督、部長の他に3人目の指導者がいるチームに対して、その方に審判員を担っていただくようお願いして、経験にもなると思い、若い教員を10人選びました」

 選ばれた教員審判は、勤務校や母校の試合を担当することはできない。10人それぞれが違う高校に勤務し、違う高校を卒業している。春になると人事異動があるため「毎年選び直さないといけない可能性があります」と桑嶋理事長。教員が審判員を務める仕組みは、徳島県や北海道でも導入されており、どちらも監督が務めた例がある。

 現在開かれている春の香川県大会では、準々決勝までの試合で教員が三塁審を務める場合がある。三塁審である理由は、新人審判員も三塁審として経験を積み、ランナーと逆方向に、二塁、一塁、球審とステップアップしていくからだ。

審判員・審判を務めた教員の声…高校野球は審判員の協力があって成り立っている

 21日、第3試合で三塁審を務めた尽誠学園の橘孝祐コーチは、審判講習会を受講し、「こんなにいろんな動きがあるのかと思いましたし、審判員さんがいなければ試合ができないことに気付けました」と目を輝かせる。公式戦のジャッジを終え、「現役時代は、審判員さんに悪態をつかないようにと指導されましたが、キャッチャーだったこともあり、アピールプレーや打席でも悪態をついてしまったことが正直あります。審判員さんに対して、それはやってはいけないことと選手たちに強く伝えたい」と襟を正した。

 同じ試合で球審デビューを果たし、農協に勤めながら土日祝で高校野球の審判をしている高松工芸OBの高橋翔真審判員は「練習試合や紅白戦の審判として、三塁審になる先生方がいらっしゃる学校に行ったときは、三塁に入って練習するなど、すごく熱心な先生が多かった」と語り、同世代の教員の姿から刺激を受けた。

 秋季大会でもこの制度を実施する予定にしているが、昨夏の状況を踏まえ、桑嶋理事長は「夏も指導者の方に三塁審として入っていただくことになるかもしれない」と悩む。全国的に審判員の高齢化、審判員の成り手不足が叫ばれ、少年野球を含めさまざまな取り組みが行われている。しかし、香川県の本施策の目的はそうではない。

「審判員さんは会社員をしていたり、それぞれが働いていらっしゃる。中には消防士さんで、夜勤明けに審判をしにきてくださっている人もいます。こちらはお願いをしている側で、審判員さんのご協力があって高校野球が成り立っています。ご負担をかけないように、自分たちでできることはしようということです」

 猛暑や過労から守らなければいけないのは生徒たちだけではない。香川県高校野球連盟に所属する教員たちは、負担を分け合いながら、持続可能な高校野球の道を探っていた。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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