神宮大会V→甲子園で実感した勝利の重み エースが志願の143球目も…監督が止めたワケ

先発した九州国際大付の岩見輝晟【写真:加治屋友輝】
先発した九州国際大付の岩見輝晟【写真:加治屋友輝】

昨秋の明治神宮大会決勝戦と同カード

 怪物2年生が上々の甲子園デビューを飾った。第98回選抜高校野球大会は22日、大会4日目が行われ、第1試合では九州国際大付(福岡)が延長11回タイブレークの末、昨秋の近畿王者・神戸国際大付(兵庫)にサヨナラ勝ちした。先発した岩見輝晟投手(2年)が8回2失点と粘り強い投球を披露。4年ぶりとなる2回戦進出の原動力となった。

 昨秋の明治神宮大会決勝と同じ顔合わせとなった1回戦屈指の好カード。187センチの長身左腕・岩見は、制球に苦しむ場面もあったが崩れなかった。走者がいない場面でも、クイックモーションでの投球を織り交ぜるなど工夫を凝らし、5回まで相手打線を無失点に封じた。しかし1-0で迎えた5回、四球からピンチを招くと中前適時打で同点。8回には勝ち越し打を許した。

 直後に味方打線が追いつき、岩見は9回もマウンドに向かう意気込みを示していたが、楠城祐介監督が制止。「『まだいきたい』ということを言っていたんですけど、さすがにやめておこうという話をしたんです」。投球数は142球に達しており、将来性豊かな左腕に無理はさせられない。背番号1の渡邉流投手(3年)にスイッチした。

 初めての甲子園で8回6安打2失点、7奪三振は数字だけ見れば上出来だ。だが、岩見は「すごくお客さんが入っていて緊張しました。自分の投球ができず、四球から失点してしまって悔しい」と全く納得していない。難敵を相手に、DH制の恩恵もあり「投球に専念できたのは良かった」と言うものの、自己採点は「20点です」と厳しくジャッジした。

 降板後はDH制を解除して右翼の守備へ。延長10回1死満塁のサヨナラ機では空振り三振に倒れた。帽子のつばの裏には前日「必笑」と書き込んだが「自分のイメージした投球ができなかったので、笑顔になれませんでした」と反省の弁。「次は緊張しないと思います。笑えるように、自己採点で100点と言えるような投球をしたい」と、25日に予定されている専大松戸(千葉)との2回戦を見据えた。

楠城祐介監督は就任後初の甲子園でうれしい勝利

 岩見本人は不満を示すが、楠城監督の信頼は変わらない。「あれだけの角度のある球は、簡単には打ち返されない」と高く評価する。楽天、ヤクルトでプロ野球選手としてプレー経験がある指揮官が認める才能の持ち主で、来年のドラフト候補としても大きな注目を集めている。

 元プロ野球選手の父・徹氏から2023年8月に九州国際大付の監督を引き継いでから、初めて踏んだ甲子園のグラウンド。「予告先発してもいい」と自信を持って岩見を送り出した。本調子ではなくても試合を作ったが、自慢の強力打線が湿り気味。昨秋の明治神宮大会決勝で11-1と圧倒した相手に苦戦を強いられた。

 延長10回のサヨナラ機を生かせず、11回は勝ち越し点を献上。その裏2死一、三塁と追い込まれたが、3番・吉田秀成内野手(2年)の左中間二塁打で2者が生還し、劇的な逆転サヨナラで初戦を突破した。

「甲子園で勝つことがこんなに大変なのかと感じました。耐えて耐えて、チャンスがくるのをうかがっていました。甲子園で1勝することの重みを全身で受けながら戦っていましたね」

 コーチ時代とはひと味違った甲子園での監督初勝利。プロ野球を経験した指揮官でも、今までに感じたことがないような独特の雰囲気が甲子園にはある。“秋春連続”の日本一へ、まずは一歩前進だ。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY