1軍キャンプ招致で「嬉しい悲鳴」 地方にもたらす経済効果…総工費30億円、市長の“挑戦”

ロッテの1軍が1次キャンプを実施した宮崎県都城市
2026年シーズン開幕が目前に迫る中、春季キャンプから約1か月半が経過した。2月、サブロー監督率いるロッテの選手たちが汗を流したのが、宮崎県都城市の都城運動公園野球場である。2025年に2軍キャンプ地となり、今年は1軍の1次キャンプ地と2軍の2次キャンプ地に昇格。「コアラのマーチスタジアム」の愛称も加わり、最多で約6000人の観客を集めた。
同球場は1962年竣工。かつて巨人がキャンプを行った歴史を持つが、その後はフェニックス・リーグが中心で、プロ野球キャンプは途絶えていた。転機となったのは防災拠点整備である。2022年度に発表された屋内競技場「パイの実ドーム」は、平時はスポーツ施設、災害時は防災倉庫として活用する構想で整備された。
この計画と同時期に、民間6団体からキャンプ誘致の要望が提出された。行政の整備方針と地域の声が合致し、プロ野球キャンプ受け入れへと動き出す。池田宜永市長は「防災施設を活用し、キャンプにも対応できる仕様にした。ロッテとの縁が結びついたことが大きい」と振り返る。
施設面の充実も後押しした。「パイの実ドーム」に加え、投球練習場「クーリッシュブルペン」やサブグラウンドが新設され、総工費約30億円をかけた環境は選手にとって理想的な練習拠点となった。
「ハード面だけでなく、やはり都城での食事がおいしいという言葉を常々言っていただいております。(選手たちが)宿泊しているホテルのスタッフの方々が頑張ってくださっているおかげですね。そういったソフト面で、より気に入っていただけたのだと思います。球団のみなさんはもちろん、ファンのみなさんも長期で滞在する方も多いので、食は大事なポイントだと思います」。
都城市は肉用牛、豚、鶏の産出額が全国1位の“肉のまち”。地元食材を生かした食事と、宿泊施設の対応が選手や関係者の満足度を高めた。こうした好循環の中、2軍キャンプ開始からわずか1年で1軍キャンプ実施が決定した。
2軍招致からわずか1年…「想定していなかった」
「正直、想定を超えていました。大変速いスピードで驚きましたし、光栄だなと。まず、2軍のキャンプを決めていただいたときも、大変ありがたいと思っていました。担当者には『まずは2軍キャンプをしっかり受け入れて、選手も含めた球団のみなさま方に都城でのキャンプを気に入っていただくこと、チームをしっかりとサポートして、いずれ1軍のキャンプにもつながれば最高だよね』という話をしていました。それでも、1年後というのは想定していなかったので、かなりうれしい誤算でしたね」
今年の1軍1次キャンプは2月1日から11日まで実施され、その後も親善試合やイベントが同球場で開催された。期間中の来場者は約4万9000人に達し、前年の2軍キャンプ(約1万9000人)から大幅増。「1軍キャンプの影響力を実感した」と市長は言う。宿泊や飲食の需要も拡大し、地域経済への波及効果も大きかった。
さらに2月28日にはロッテー西武のオープン戦を開催。新市誕生20周年事業の一環として行われ、地元団体の演奏やダンスも加わり、地域一体のイベントとなった。試合後には野球体験イベントも行われ、小学生約160人が参加。市長は「子どもたちにとって大きな機会になった」と意義を強調した。
初の1軍キャンプを終え、都城市は次を見据える。池田市長は「来年以降もぜひ都城で一軍キャンプをしていただけるように、球団の方々ともコミュニケーションを取り、必要な対応をしっかりとしていきたいと思っています」と語る。運営面の反省を踏まえ、選手・ファン双方にとって魅力的な環境づくりを進める考えだ。
また、ネーミングライツによる「コアラのマーチスタジアム」の認知も広がり、地域住民にとっての親しみも増している。市内ではロッテのロゴ入りキャップをかぶる子どもの姿も見られるようになった。同スタジアムをはじめ、都城運動公園が地域からより愛される場所になるとともに、千葉ロッテマリーンズもまた、都城市民にとって身近な存在になっていくだろう。
(「パ・リーグインサイト」高橋優奈)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)