青森の名門を支えた約300万円 甲子園まで19時間のバス移動…SNSで広がった支援の輪

八戸学院光星ナイン【写真:加治屋友輝】
八戸学院光星ナイン【写真:加治屋友輝】

春夏通じ青森県勢初の全国制覇にはまたもや届かず

 第98回選抜高校野球大会は27日、準々決勝4試合が行われ、八戸学院光星(青森)は1-2で中京大中京(愛知)に惜敗した。春夏を通じ青森県勢初の全国制覇には、またも届かなかった。舞台裏では、学校側が公式X(旧ツイッター)で資金面に苦慮している現状を伝え、クラウドファンディングによる支援を呼びかけたところ、目標金額の200万円を超える298万円(27日午後3時半現在)が寄せられたことが話題になった。

 甲子園大会の長い歴史の中で、青森県勢はまだ1度も優勝したことがない。八戸学院光星は2011年夏、2012年春、同年夏に3季連続で決勝に進出するも全て敗退。ただ、青森で最も頂点に近づいたチームである。

 大会期間中にクラウドファンディングを通して、野球部員や応援団の長期滞在に支援を求めることは、他の出場校も行っている。八戸学院光星にとっては2023年夏、2024年春に続き、3度目の試みだった。

 ただ今回は反響が違った。投稿に「本州最北端・青森県から甲子園に出場するには、1試合あたりおよそ2000万円もの費用がかかります。勝ち進むたびに滞在は長期化し、費用はさらに膨らんでいきます。仮に決勝まで勝ち進んだ場合、その総額は約1億円にものぼります」と具体的な数字を挙げて訴えたことがメディアに取り上げられ話題を集めた。

「近年は不景気で企業から頂く寄付金も減り、物価高で移動費の捻出が厳しくなっている事情はあります」。こう語るのは、アルプス席で応援責任者を務めていた木村一夫教諭だ。

 ベンチ入り選手20人と監督、野球部長らには、主催者側から交通費が支給され、宿泊費も援助される。ただ、八戸学院光星の硬式野球部員は、女子マネジャー3人を含め91人にのぼる。木村教諭は「遠い青森から全員を来させるのは、贅沢だという意見もあるかもしれませんが、野球部は仲井(宗基)監督の方針で、甲子園練習では全部員に甲子園の土を踏ませています。ベンチ入りできなかった選手を含めて『一人一役 全員主役』がスローガンでもあります」と説明する。

「16歳で親元を離れ志を抱いて八戸に来る子たちに敬意を表したい」

 支援を求めるだけではない。野球部は経費節減のため、甲子園へ向けて地元の青森県八戸市を発った際も、新幹線や航空機ではなく、大型バス2台とマイクロバス1台に分乗。仲井監督、小坂貫志野球部長、コーチ陣ら6人が交代で運転し、陸路で関西入りした。普段、練習試合で遠征する際も基本的にバス移動が多く、指導陣は半ば大型免許の取得が必須になっているという。

「クラウドファンディングに賛否両論があることも承知していますが、寄付だけでなく『選手の皆さんが夢を諦めずに済むようにしてあげてほしい』といったメッセージもたくさんいただいていて、感動しています」と木村教諭は頭を下げる。

 八戸学院光星のメンバーに、青森県以外の出身者が多い点を疑問視する声も耳に入るが、地元・八戸市出身である木村教諭は「私自身は、16歳で親元を離れ、志を抱いて八戸に来た子たちに敬意を表したいですし、選手たちも地元の皆さんに応援していただけるように努めています」と語る。

 野球部以外の吹奏楽部員、チアリーダー部員などの応援団は、試合のたびに約19時間のバス移動。サービスエリアで休憩を挟むとはいえ、宿泊なしでトンボ帰りを続けた。バスのレンタル料が年々上昇している現実もある。

 この日の準々決勝に向けては、50人がバス2台に分乗し、前日(26日)正午に八戸を出発。車中泊をして、試合開始(午前8時半)前に甲子園球場に到着した。準々決勝に勝っていれば、決勝までインターバルが短くなることから、ホテルに宿泊することになっていたが、あえなく八戸へ戻ることになった。

 本州最北端から甲子園に来ることは、やはり並大抵ではない。厳しい条件の中でも、学校ぐるみで“全国の頂点”を目指し、挑戦を続けていく。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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