春夏10度目Vも大阪桐蔭は「伝統がない」 名将が説く“40年の重み”…紡ぐ縦の繋がり

大阪桐蔭・西谷浩一監督【写真:加治屋友輝】
大阪桐蔭・西谷浩一監督【写真:加治屋友輝】

春夏10度目Vを達成…西谷浩一監督が語る大阪桐蔭の“伝統”

 曇り空の甲子園に何度も歌ってきた校歌が響き渡った。第98回選抜高校野球大会は31日、決勝戦が行われ、大阪桐蔭が7-3で智弁学園(奈良)を下し、4年ぶりの優勝を果たした。東邦(愛知)に並ぶ選抜最多の5度目の栄冠で、史上2校目となる春夏通算10度目の甲子園制覇となった。西谷浩一監督は「OBが9回も優勝してくれていましたので、とにかく優勝しようということを、毎日毎日それを子どもたちと話をしていたので。なんとか達成できました。卒業生にいい報告ができる」と、まずは教え子たちへの感謝を口にした。

 甲子園でお馴染みの指揮官は報徳学園(兵庫)から関大を経て、1993年に大阪桐蔭高のコーチに就任した。1998年11月からは同校監督を務め、社会科教諭としての顔も持つ。甲子園では、2008年夏に浅村栄斗(現楽天)らを擁して初優勝を飾ると、2012年と2018年には春夏連覇を達成。今や高校野球界を象徴する“名将”の一人として、その名を轟かせている。

 数々の金字塔を打ち立ててきたが、「私は高校も大学も伝統校でやらせてもらいましたけど、大阪桐蔭は創立して40年の学校です。100周年を超える高校に比べたら、ウチはまだまだ伝統がない」とハッキリと言い切る。

 指導の根幹にあるのは、高校卒業後も高いレベルで野球を続けてほしいという一貫した願いだ。「全員がプロへ進むのは難しいが、大学、社会人と、とにかく上のカテゴリーで野球を続けてもらいたい。現在、社会人野球の現役選手として40名以上がプレーしていることは、他校に負けない自慢です」と胸を張る。

 実際、毎年11月に京セラドームで開催される社会人野球の日本選手権には、部員全員を連れて足を運んでいる。さらに、グラウンドにかつての教え子である現役の社会人選手を招くこともある。「時には3時間ほどノックを手伝ってもらうこともあり、今の選手たちにとって最高の刺激になっている」。この強固な“縦の繋がり”こそが、大阪桐蔭の見えない強みとなっている。

「2世選手」への厳しさ…名将が覗かせる“おじいちゃん”の素顔

 チームには西武・中村剛也内野手の息子である中村勇斗内野手(2年)や、OBを父に持つ藤田大翔捕手(3年)ら、いわゆる2世代に渡って大阪桐蔭でプレーする“2世”選手が名を連ねている。教え子が親となり、その息子を再び預かる立場となった名将は、自身の心境の変化を隠そうとしない。

「彼らの親を知っているだけに、私としては『おじいちゃん』になったような感覚がある」と苦笑いする。

 彼らに対しては「甘やかしたらあかん」という意識からあえて厳しく当たってしまうこともあるというが、その裏では「家に帰ってから、あんなに怒らなくてもよかったかなと反省する自分がどこかにいる」と、勝負師の顔から一変した親心を覗かせる。自分の感じ方が以前とは変わってきていると吐露しながらも、教え子の子どもが入部してくれることへの純粋な喜びがその表情には滲んでいた。

 西谷監督には趣味がない。休みの日は家で過ごしていても、結局は選手のことを考えてしまう。「24時間、子どもたちの命を預かっているという意識は常に持っている」という言葉は、指導者としての覚悟そのものだ。

 昨年は春夏ともに甲子園を逃すという苦杯をなめ、そこから這い上がって手にした今回の紫紺の優勝旗。歴史に名を刻んだ名将の視線は、すでに史上初となる「3度目の春夏連覇」という前人未到の領域へ向けられている。

(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)

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