大阪桐蔭の怪物左腕が「一気に楽に」 寮同部屋のおかわりジュニアへ…日本一への“絆”

大阪桐蔭・川本晴大【写真:加治屋友輝】
大阪桐蔭・川本晴大【写真:加治屋友輝】

2年生左腕・大阪桐蔭の川本晴大が聖地で躍動…15三振を奪う「100点」のフィナーレ

 新たな“怪物”の躍動に、甲子園の観客が酔いしれた。第98回選抜高校野球大会は3月31日に決勝戦が行われ、大阪桐蔭が7-3で智弁学園(奈良)を下し、春夏通算10度目の全国制覇を成し遂げた。そのマウンドで異彩を放ったのは、192センチの大型左腕・川本晴大投手(2年)だった。

 先発を託された川本は、9回150球を投げ抜き、6安打3失点の完投。自己最速を更新する148キロの直球を武器に、15三振を奪う圧倒的な投球を見せた。主将の黒川虎雅内野手(3年)とともに優勝インタビューに臨んだ16歳は「100点です! 下級生のうちにこのような経験ができて本当に嬉しい」とあどけない表情をみせた。

 背番号「1」の吉岡貫介投手(3年)や左腕・小川蒼介投手(3年)といった経験豊富な上級生が控える中での抜擢だった。「先輩たちがいる中で自分が託された。『先輩たちに負けない』という気持ちでした」。吉岡からは、茶目っ気たっぷりに「負けたら知らんぞ(笑)」とゲキを飛ばされ、闘志に火がついた。

 目標としていた聖地の決勝マウンド。懸念していた立ち上がりは、最高の形で幕を開けた。最速148キロの直球など、力強い投球で3者連続空振り三振を奪うロケットスタート。「いつも初回が不安なので……。その中で先頭から三振を取ることができ、流れに乗れました。自信がつきました」と、自らの心配を振り払う快投を振り返った。

 頼もしい味方たちも怪腕を援護した。2回、西武・中村剛也内野手を父に持つ中村勇斗(2年)が、智弁学園のエース・杉本真滉投手(3年)から先制の適時打を放つ。3回には藤田大翔捕手(3年)の2点適時二塁打でリードを広げた。「(中村とは)小学校(ライオンズジュニア)から一緒で寮も同部屋。先制してくれて一気に気持ちが楽になった」。

「顔が死んでしまった」被弾の窮地を救った相棒の言葉

 ただ、勝利への道は平坦ではない。強豪の智弁学園にジワジワと詰め寄られ、1点差で迎えた6回だ。4番・逢坂悠誠(2年)に、内角を狙った直球が甘く入り、右翼席へのソロを許した。高校野球で初めて経験する“被弾”。あまりにも重い一発に、一瞬足元が揺らいだ。

 バッテリーを組んだ藤田は「あの場面は(川本の)顔が死んでしまっていた」と明かした。「日頃から川本にはのびのび自信を持って投げさそうと心がけています。『お前が一番なんだそ!』と声をかけて、自信を取り戻そうとしました」。相棒の言葉を受け、すぐさま気持ちを切り替えた川本は後続を打ち取ると、味方が7回に4点を入れて一気に勝利を手繰り寄せた。

 9回に入っても球威は衰えなかった。最後の150球目は146キロの直球。この日15個目の三振を奪うと雄叫びを上げ、歓喜の輪の中で指を立てて“頂点”へ向けた。「甲子園の決勝で先発して日本一になるのが目標だった。今はとにかく嬉しい」。

 根尾昂(現中日)や藤原恭大(現ロッテ)を擁し、春夏連覇を成し遂げた2018年の最強チームに憧れて大阪桐蔭の門を叩いた。今度は自分が、歴史を作る側に回った。「1つの甘いボールが失点に繋がることを痛感した。もう一段階、厳しく投げ切れるようになりたい」。さらなる進化を誓った16歳の怪物が、夏にどのような姿で聖地へ帰ってくるのか。今から楽しみでならない。

(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY