“珍伝統”に「カルチャーショックが大きくて大きくて」、試合中にサンドイッチも…刺激の連続で迎えるリーグ開幕戦|荻野貴司のチェコ通信〜Hra!〜#1

  • 荻野貴司(聞き手:佐藤直子)
    荻野貴司(聞き手:佐藤直子) 2026.04.10
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チェコで最も立派と言われる本拠地球場にて【写真:本人提供】チェコで最も立派と言われる本拠地球場にて【写真:本人提供】

荻野貴司の連載スタート…チェコから生の声を届けます

 桜舞う4月。日本各地で数多くの人たちが新生活をスタートさせた。時を同じくして、中欧・チェコ共和国(以下チェコ)で新たな一歩を踏み出したのが、荻野貴司外野手だ。ロッテで活躍すること16年。40歳を迎えた盗塁王が次なる舞台として選んだのは、チェコ・エクストラリーガだった。

 チェコと言えば、つい先頃もワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンドを東京で戦い、野球に対する真っ直ぐな姿勢が多くの反響を呼んだ。だが、「チェコってどんな国?」「チェコ野球の実態って?」と聞かれた時、すぐに答えられる人はほんの一握りだろう。

 そこで、今季は強豪ドラツィ・ブルノで優勝を目指す荻野が、自らの目で見て、肌で感じたチェコをレポートする連載「荻野貴司のチェコ通信〜Hra!(フラ!)〜」がスタート。「Hra!」はプレーボールの意。チェコ親善アンバサダーも務めるスピードスターが、異国での新鮮な体験を撮り下ろし写真とともにお届けします!

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 日本の皆さん、こんにちは! 今季からドラツィ・ブルノの一員となった荻野貴司です。3月下旬に家族と一緒に、ここブルノに引っ越してきました。まさか自分がチェコに引っ越すことになるとは……(笑)。人生何があるかわかりません。

 ご存じの通り、昨季限りでロッテを自由契約になった後、縁あってドラツィでプレーすることになりました。ロッテの春キャンプにチェコ代表コーチが参加していたこと、プレーできるうちに海外で経験値を増やしたかったことなど、色々な要素を重ねた結果、矢印の指し示す先にあったのがチェコでした。チェコに旅行したこともなければ、チェコ語を知るわけもない。でもなぜか、そこに迷いはありませんでした。

チェコで一番立派だと言われる本拠地球場で笑顔【写真:本人提供】チェコで一番立派だと言われる本拠地球場で笑顔【写真:本人提供】

「チェコで一番立派」はウソじゃない…天然芝が生えそろう本拠地

 さて、チェコにやってきて2週間ほど。仮住まいから自宅となる場所に移動して間もないので、家の中はまだ落ち着きませんが、家族も一緒に来てくれていますし、ブルノの街はのどかでとても過ごしやすいところです。プラハに次ぐ第2の都市ではありますが、平和な田舎町という感じ。中心地に足を運べば印象が変わるのかも。ただ、想像していた中欧の中世の街並みには、まだ出会っていません(笑)。

 仮住まいが球場に隣接していたため、到着翌日に一部の選手と挨拶をかわし、2日目から体を動かし始めました。チェコで一番立派だと言われる球場は、客席が内野エリアのみでコンパクトながら天然芝が生えそろい、予想を上回るきれいさでビックリ。慣れ親しんだマリンスタジアムとはまったく違う雰囲気です。

 チームメートはとにかく若い!(笑)。10代から20代前半の選手が大半で、16歳なんていう選手もいて驚きました。最年長は43歳と聞いていたものの、僕が挨拶した選手に限れば38歳が一番年上。どうやら、新人ながら最年長になりそうな予感アリ……。チェコでは昼間は仕事をしたり学生だったりする“二刀流”が多いので、自分の都合がつく時間を練習に充てるのが基本。5、6人のグループに分かれて練習をしていて、まだ全員で集まって練習したことはありません。

伝統行事に驚かされたイースター・マンデーにチームメートたちと【写真:本人提供】伝統行事に驚かされたイースター・マンデーにチームメートたちと【写真:本人提供】

向上心あふれる若いチームメートたちの刺激

 選手たちはみんな、向上心とやる気の塊のような人たち。練習前には「このプレーを練習するから見ておいて」とプロ野球やメジャーのプレー動画がSNSで送られてきたり、出会ってすぐに「バントのやり方を教えてほしい」とお願いされたり。チェコ代表チームがWBCで見せた、そのままの姿がそこにはあります。

 さすがに実戦経験のないまま開幕を迎えることはないだろう、と思っていたところ、先日ついに練習試合を実施。ダブルヘッダーで7回までを2試合しましたが、僕は1試合目にフル出場して終わり。右翼と中堅にはレギュラーがいるということで、練習試合では左翼を守りました。開幕後も左翼の機会が増えそうです。

 試合中、ふと気が付くとベンチ内でサンドイッチを食べる選手がいました。思わず二度見しましたね(笑)。日本ではなかなか見ない光景ですが、練習試合だったからなのか、チェコでは当たり前の光景なのか、今後観察を続けたいと思います。

 チームメートはみんな親切で「家まで迎えに行くよ」「困ったことがあったら何でも言ってね」と声を掛けてくれます。6日には有志が参加する球団のイースター(復活祭)パーティに朝から出席。チェコでは900年以上続く伝統として、イースター・マンデーには甘いお菓子を食べたり、お酒を飲んだり、歌を唄ったりしながら、男性がポムラースカという鞭で女性を軽く叩く風習があるとか。僕も参加しましたが、カルチャーショックが大きくて大きくて(笑)。ただ、一緒に酒を酌み交わしたことで、チームメートとの距離は一気に縮まりました。

開幕戦は10日、宇草孔基が所属するコトラーシュカ・プラハと対戦

 さあ、10日にはいよいよ開幕を迎えます。自主トレとして練習を積んでは来ましたが、昨年までは2月1日にキャンプインし、オープン戦を重ねてコンディションを整えてきました。ここまで実戦を経ずに開幕を迎えるのは初めてのことで、不安がないと言えば嘘になるでしょう。ただ、チームの勝利に貢献することが僕の仕事。怪我のないように、自分の体の声に耳を傾けながら、シーズンを過ごしていきたいと思います。

 エクストラリーガでは、8チームが8月まで毎週2、3試合、計35試合を戦い、プレーオフを経て、チェコシリーズで優勝が決まります。記念すべき開幕戦の対戦相手は、宇草孔基くん(元広島)の所属するコトラーシュカ・プラハ。宇草くんとはチェコの情報交換も含め、よく連絡を取り合っていますが、このチェコの地で対戦できることが楽しみでなりません。日本でも有料ながら「Baseball Czech TV」でオンライン中継を見られるようなので、ご興味ある方はぜひ!

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