なぜ大谷翔平は“最もHRにならない球”を打てた? 「4種のバット使い分け」と打撃コーチも驚嘆した技術「大抵の打者ならゴロ」

コーチを脱帽させた大谷翔平の3号【写真:黒澤崇】コーチを脱帽させた大谷翔平の3号【写真:黒澤崇】

大谷は変則左腕マンティプリーの内角低めシンカーをバックスクリーンへ運んだ

 異次元の豪快アーチだった。ドジャース・大谷翔平投手が6日(日本時間7日)の敵地・ブルージェイズ戦で放った3号ソロ。変則左腕マンティプリーの内角低めシンカーをバックスクリーンへ運ぶという“曲芸撃ち”だった。

 昨年のワールドシリーズで歓喜に沸いたロジャースセンターで見せた、至高の技術。大谷の豪快アーチに、ベンチ内は大盛り上がりだったという。ドジャースのアーロン・ベイツ、ロバート・バンスコヨック両打撃コーチに解説してもらった。

 変則左腕が投じた内角低め。見逃せばボール球、食い込んでくるシンカーを捉えた。打球は角度25度でセンター方向へ伸びていった。両打撃コーチとも手放しで称賛する打撃だった。

 ベイツ打撃コーチ「あの左投手のシンカーをセンターまで運んだホームランは、素晴らしいスイングだった。大抵のバッターなら、あの球を打ってもゴロになってしまうからね」

 バンスコヨック打撃コーチ「内角低めのシンカーに対して、本当に素晴らしいスイングをした。あれは実に見事だった。ボールの内側を叩き、最後までしっかり振り抜くことで、グラウンドの最も広い部分(センター方向)へ力強く打ち返していた」

 大谷自身は「いいコースでしたけど、いいアプローチができた。(フェンスを)越えるかなとは思いました」と淡々と振り返っていた。だが、日頃から大谷のアーチを間近で見ているドジャース選手も衝撃を受けていたという。

 ベイツ打撃コーチ「ムーキー(ベッツ)がベンチ内で話していたことだが、『普通なら単打になるところをショウヘイはホームランにしてしまう』と言っていた。まさにその通りだ。確かに、あの球種、コースはうまく打てても、センターか左中間へのライナーになる当たりだが、ショウヘイの手にかかればホームランになる。それがショウヘイを特別な存在にしている理由の一つだ」

 昨季、左投手の大谷に対するシンカーの割合は23.5%。49打数15安打の打率.306と高いアベレージを残したが、角度0度と左投手の球種別では最も打球が上がらない数字となっていた。さらに左腕が内角低めに投じたシンカーを本塁打としたのは、エンゼルス時代の2021年9月10日にアストロズのフランバー・バルデス(現タイガーズ)から放った1本だけ。いわば左投手にとっては、最も本塁打になりにくい“安全球”だった。

 何が本塁打とさせたのか。

バットの長さやくり抜きの有無…「相手投手に合わせて変えているようだ」

 その理由の1つが今季から取り入れた、バットの先端をくり抜いた「くり抜きバット」だ。バットの振り抜きやすくなり、操作性が向上。厳しい内角攻めにも対応できるようになるという。

 ベイツ打撃コーチ「カップバット(くり抜きバット)を使うと、バットの芯が少し手元のグリップ寄りに移動する。逆にカップのない、通常のバットは芯が先端よりに。バットの芯が手元に来ることで内角を攻められたり、詰まらされたりしそうな場面では対応しやすくなる。そういった感覚がある時に、彼はカップバットを選んでいる」

大谷翔平が使用する“くり抜き”バット【写真:黒澤崇】大谷翔平が使用する“くり抜き”バット【写真:黒澤崇】

 昨季は長さの違う2種類のバットを併用していたが、今季は4種類のバットを使い分けているという。

 ベイツ打撃コーチ「基本的にはカップのない標準的なバットをメインに使っている。そこから状況に応じて、34.5インチ(約87.6センチ)や34インチ(約86.4センチ)、そしてカップの有無などの選択肢の中から、相手投手に合わせて変えているようだ」

 開幕4カードを終え、45打数12安打の打率.267、3本塁打、8打点、OPS.896。8日(同9日)のブルージェイズ戦では3打数無安打2四死球。2009年イチローに並ぶ43試合連続出塁をマークした。

 バンスコヨック打撃コーチ「ストライクが来ない時にしっかり四球を選び、素晴らしい仕事をしている。これは大きな武器だ。ショウヘイの後ろにはフリーマン、タッカーといった強力な打者たちが控えているからね。ショウヘイが歩くことで、後続の打者に走者を還すチャンスが生まれる。他の打者たちが調子を上げていけば、相手チームはショウヘイとも勝負せざるを得なくなる。そうなれば、相手にとっては『どちらを選んでも苦しい』という状況になる」

 大谷は自身の打撃の状態について、「徐々に上がってきているかなという段階。いきなり良くなることはあまりないので、5月ぐらいに向けて状態が上がってくれば、今まで通りのペースでいける」と語る。2026年も大いに楽しませてくれそうだ。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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