一発長打は「期待できない」 東大指揮官明かす裏側…“2大改革”が生んだ知の領域

56季連続最下位の“弱者の兵法”「ウチの打線に連打や長打は期待できない」
東京六大学野球春季リーグが11日に開幕した。連盟結成101年目の今年から、東京六大学はDH(指名打者)制と“拡大ベース”の採用に踏み切った。他大学以上にルール変更を戦術に活かし、味方に付けようとしているのが、56季連続最下位からの巻き返しを図る東大だ。開会式直後の昨秋覇者・明大との試合で、いきなり大接戦を演じて見せた。
東大はこの明大1回戦に2-3で惜敗した。それでもDHと拡大ベースの活用には、大きな手応えがあった。
まずは拡大ベース。接触プレーによる負傷を軽減する目的で、今季から本塁を除く各ベースの一辺を、従来の15インチ(約38センチ)から18インチ(約46センチ)に大型化。一辺は約8センチ長くなり、一・二塁間と二・三塁間の走路はそれぞれ約16センチも“短縮”されたことになる。東大はこれを活かし、明大1回戦では4盗塁を決め、失敗はなかった(明大は2盗塁)。
東大を率いる大久保裕監督は「塁間が短くなり、盗塁が成功する確率が高くなったのは確か」と指摘する。「正直言って、ウチの打線に連打や長打は期待できない。1死二塁からワンヒットが出たとしても、なかなか点が入らない。走れる選手は比較的多いので、まず無死一塁から(盗塁で)無死二塁をつくり、(進塁打で)1死三塁の形をつくる作戦でいきたい」と説明する。昨秋リーグ2位のチーム11盗塁(最多は早大の「12」)をマークしていたが、今季はさらに拍車がかかりそうだ。
2回には先頭の4番・荒井慶斗外野手(3年)が左前打で出塁し、二盗にも成功。荒井慶は4回にも2死から左前打で出塁後、2つ目の二盗を決めた。6回には先頭の2番・秋元諒内野手(3年)が左前打を放った後、二盗に成功した。
そして0-2とリードされて迎えた7回。1死から7番・樋口航介内野手(3年)が内野安打で出塁後、二盗にも成功。明石健捕手(4年)の右翼フェンス直撃の適時二塁打でホームを踏んだ。さらに東大は代打・村尾優作外野手(2年)も左前適時打を放ち、同点に追いついたのだった。

「走ったり守ったりするのは得意でない」選手がDHでリーグ戦デビュー
東大・堀部康平主将(4年)は「ベースが大きくなった分、走者は野手のタッチをかわしやすくなったので、野手から遠い位置に滑り込む練習をしてきました」と明かす。2盗塁を決めた荒井慶は「以前から足には自信がありましたが、今季へ向けて、相手投手のモーションを盗む技術を重点的に磨いてきました。ベースが大きくなった分、一塁走者の時には、これまでより後ろ(外野寄り)でリードを取り、一塁手のタッチをかわせるようにしています」とうなずく。
一方、リーグ戦デビューを飾った福井克徳投手(2年)はDH制導入の恩恵を受けた選手といえる。この日は「6番・DH」でスタメン出場。身長172センチ、83キロという体格で、大久保監督は「投手としては球が速くなくて、まだ神宮で通用するピッチングはできない。走ったり、守ったりするのも得意ではない。ただ、打つ方はそこそこいけそうなので、当分こういう形で使っていければと思います」と説明する。
福井は第1打席では二ゴロ。5回先頭の第2打席で左前へリーグ戦初安打を放つと、早くも代走を送られベンチに退いたが、“打つだけ”の選手にもチャンスが与えられた意義は、選手自身にとってもチームにとっても大きい。
同点で迎えた8回の守備。東大は1死満塁のピンチで相手打者を浅い中飛に仕留めるも、中堅の伊藤滉一郎外野手(4年)が捕球後、左翼手と交錯し転倒。この隙を突いて三塁走者にタッチアップから決勝のホームを奪われてしまった。大久保監督は「最後に勝ち切れなかったのは力の差。隙を突く明治の走塁を見習わなきゃいけない」と反省したが、表情は明るかった。
東大は昨秋、慶大1回戦と法大1回戦に勝ったが、勝ち点奪取には至らず、2017年秋に法大に連勝したのを最後に、16季連続勝ち点なし。さらに1997年秋に5位になったのを最後に、56季連続最下位が続いている。今季こそDHと拡大ベースの導入を追い風に、束になって勝ち点奪取、そして念願の最下位脱出を果たしたいところだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)