非公開情報がファンに漏洩 廃止した人気イベント…プロ球団が断腸の決断、超えた一線

四国IL・香川が2026年から公式戦試合終了後の「お見送り」を内容変更
盛況のファンサービスだったが、実質の廃止をせざるを得なかった。四国アイランドリーグPlus・香川オリーブガイナーズは7日、公式戦試合終了後に行ってきた監督、コーチ、選手によるファンサービス「お見送り」の内容変更をホームページで発表した。2024年に同球団にコーチとして入団し、2025年12月に社長に就任した澤村俊輔球団社長は、2年前から同サービスの実施に関して「ネガティブな部分が大きい」と感じていたという。
同サービスは、ゲームを終えたばかりの首脳陣や選手が、球場のコンコースや出入り口に並び、来場者に応援してもらった感謝を伝えながら「お見送り」をするもの。球団関係者とファンの動線が分けられた本拠地球場を有するNPBと違い、地方球場で興行をしている地域リーグ(旧独立リーグ)が独自にはじめた常設のファンサービスであり、同リーグが「選手とファンの距離が近い」と言われる所以でもある。
ファンが選手に直接、奮闘を労ったり、差し入れを手渡したり、サインや写真撮影を求めたりすることができ、2005年に地域密着をコンセプトに発足した四国アイランドリーグPlusの4球団でも、球団に対する親近感を持ってもらう役割を果たしてきた同サービス。しかし、澤村球団社長は「社員でしっかりと考えた結果、今の香川オリーブガイナーズには必要不可欠なサービスではなくなったと判断しました」と語る。
その理由は2つある。まず1つは健全なチーム運営のためだ。澤村球団社長は「お見送り」が「情報を聞き出す場になっているんですよ」と指摘する。古くから応援しているファンとチームとの距離感が、長年の「お見送り」実施によって近くなり過ぎたことで、「誰がケガをしているだとか、(オフィシャルに発表していない)機密にしなければいけないチームの情報が、どんどん漏れ出ていっていたんです。漏洩リスクがあるという段階ではありません。もう漏れ続けている状況にあったんですよ」と明かす。
地域密着がかなうも、近くなり過ぎたチームとファン 香川は新たなフェーズへ
一部の選手が「お見送り」中にファンと連絡先を交換していることもあった。チームの編成などのクローズドな情報や、選手の個人情報などを聞き出せることを「距離が近いと捉えるのか、一線を超えていると捉えるのか」と澤村球団社長は首を傾げた。
さらに、選手の心と身体を守ることが2つ目の理由である。2023年から6季連続でリーグ最下位に沈み、低迷期を迎えている。「お見送り」中の誹謗中傷などの被害は現時点で確認されていないが、「そのようなリスクも抱えています。彼らもプロ野球選手ですので(不特定多数と接触する場は)極めて危険ですよね」と話した。
今季からは試合後、日替わりで2選手がコンコースに立ち、「お見送り」を実施している。12日にレクザムボールパーク丸亀で行われたホーム開幕戦では、試合後に選手との交流を求め、選手専用出入り口で出待ちをするファンの人数が増加。同球団のユニホームや帽子を身につけ、サイン色紙を持ちながらファンサービスを待つ子どもたちの姿もあった。
幼いファンの様子を知り、澤村球団社長は沈痛な面持ちになった。しかし、地域リーグのアイデンティティとも言える、全員による「お見送り」の廃止という“文化革命”は進んでいく。「僕は、一線を超え、選手からの特別扱いを求めるファンではなく、良識のあるファンを惹きつける企画をやっていかないといけないと思っています」。地域リーグという名のプロ野球を、より良質なエンターテインメントにするために大きく舵を切ったのだ。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)