荻野貴司が届ける連載・第2回 開幕戦で沸いてきた「勝ちたい」気持ち
今季からチェコのエクストラリーガでプレーする荻野貴司外野手がお届けする連載「荻野貴司のチェコ通信〜Hra!(フラ!)〜」。4月10日に今シーズンが開幕し、23日現在、所属するドラツィ・ブルノは2勝2敗となっている。
荻野は「2番・左翼」で全試合に先発出場し、11日のコトラーシュカ・プラハ戦で初安打と初打点を記録。18日のイーグルス・プラハ戦では延長10回2死一、三塁の場面で、左中間にポトリと落ちそうな打球をダイビングキャッチしてみせ、早くも走攻守にわたる存在感を強めている。
その一方、グラウンド内外で日本との文化の違いに驚かされることもあるようで……。第2回も、チェコ親善アンバサダーを務める荻野が現地から、獲れたてフレッシュな体験をレポートしてくれた。
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日本の皆さん、こんにちは! エクストラリーガも開幕を迎え、ここまで4試合を終えました。基本的に公式戦は週末に2〜3試合行われ、それ以外はチームや個人での練習に励む形。選手の多くは野球以外の職業を持つ社会人だったり、学生だったりするので、なかなかチーム全員で練習をする機会はありません。
日本では、開幕前に1か月ほど練習試合やオープン戦を行いながら、長いシーズンに向けて体と心の準備をしていきます。でも、ドラツィでは練習試合を1度しただけ。前日まで試合勘も戻ってこないし、気持ちも高ぶってこない。本当に「楽しく野球をやりました」だけになってしまうのかな。そんな感覚を持っていました。
そして迎えた開幕当日。不思議なもので、やっぱり勝負事になると緊張感も出てくるし、勝ちたい気持ちが湧いてくる。チームメートみんなが勝つために真剣になって開幕を迎える姿に、仲間のために僕も力になりたい、一緒に勝ちたい、という気持ちが湧き上がってきました。
球場にたくさんのファンが来てくれたことも、気持ちのスイッチが入った大きな要因です。本拠地ブルノにあるマサリク大学では数多くの日本人医学生が学んでいるそうで、開幕戦にも約40人が応援しに来てくれました。その他、スペインやポーランドなどヨーロッパ各地から見に来てくれた日本人の方も。国境を越えて応援に来てくれるなんて本当に有難いことですし、「頑張ってください」と気軽に声を掛けてもらえる距離の近さも、また新鮮ですね。
開幕戦で実感したのは、やはり試合勘の鈍りでした。実戦を積めていないことに加え、対戦する投手は全員が初顔合わせ。日本人とは球筋が違うこともあり、感覚を掴めないまま初戦はノーヒットで終わりました。投手と対戦しているというよりも、自分の感覚を取り戻すことで精一杯。なんとか2試合目に初ヒットが出た後は、ヒットと出塁が続いているので状態は上向いていると思います。
トレーナー、通訳なしの環境でサバイバル「不都合なことだらけ」
今はトレーナーも通訳もいないため、体のケアは自分でしなければいけません。まだ寒い日もあるので、試合前にはホットクリームを塗って体をほぐしたり、試合後の球場や自宅ではマッサージ器を使ってみたり、これまで以上に自分の体と向き合う時間を持っています。ブルノの街にもマッサージなどのケアをする治療院があるようですが、実はいたんです。チームメートにマッサージ師の勉強をしている選手が! しかも16歳という若さ。今度マッサージをお願いしてみようと思います。
試合中のコミュニケーション、試合前後のミーティング、これらはすべてチェコ語で行われます。改めてお伝えしますが、僕はチェコ語がわかりません。チェコに引っ越してきた当初は、今年のWBCまでチェコ代表内野守備コーチだった田久保賢植さんが数日サポートしてくれたものの、すでに日本に帰国。監督・コーチやチームメートは英語で話し掛けてくれますが、わからない単語も多いし、言いたいことがパッと出てこない。正直、不都合なことだらけです。
でも、勘違いしないでください。僕はこの環境がまったくストレスにはなっていません。むしろ、とても楽しいんです(笑)。試合前に円陣を組む時も、チェコ語で話しているので、ちゃんとした意味はわからない。でも「あの表情だったら、こういうことを言っているんだろうな」「この声の感じだと、こんな内容かな」と想像力をフル活用。「きっと日本に来ていた外国人選手はこんな感じで過ごしていたのかな。もっと違う接し方をしてあげられたかもしれない」と、今になって思っています。
集合時間は7時のはずが…荻野が学んだ“チェコ流”とは?
チームメートはみんな親切で、先日も10人ほどでチェコ料理を一緒に食べに行きました。レストランに夜7時集合だったので、僕は日本の時と同じように6時50分に現地へ到着。「一番乗りか」と、みんなの到着を待つことにしました。10分経ち、集合時間の7時。まだ誰も来ません。さらに10分経っても来る気配なし。「間違えたか?」と焦りはじめた7時20分に、ようやく1人やってきました。そこから20分後にまた2人。少しずつ増え、少しずつ途中で帰り、2時間経った9時にも2人登場(笑)。途中でバーに移動して、最終的には日付が変わる頃までワイワイ過ごしました。
ここで得た学びは「どうやらチェコでは集合時間ピッタリに来る人はいないらしい」ということ。郷に入ったら郷に従え。次回は僕も焦ることなく、現地の人のように10分ほど遅れて行こうと思います(笑)。
チェコは全体的に大らかな文化なのかもしれません。ご覧いただいた方もいると思いますが、ドラツィでの僕の背番号は「0」。ロッテでも2017年からつけていた愛着ある番号を、球団が用意してくれていました。開幕戦の前、「0」とついたユニホームを着てみると……キツい。そういえば、ユニホームの採寸ってしたっけ? していません。球団スタッフが目測で「オギノのサイズはこのくらいだろ」と発注してくれたようなのですが、残念ながら小さかった(笑)。キツいのは誰の目にも明らかだったようで、新しく作り直してくれるというのですが、渡された代替ユニホームは背番号「23」。皆さん、僕がユニホームを忘れたわけでも、背番号を変えたわけでもなく、作り直しているだけですよ(笑)。
さて、今週24日からは初めての3連戦に臨みます。対戦するのは3試合ともトシェビーチ・ニュークリアズですが、2試合がアウェーで1試合がホーム。経験したことのない形式で行われる3連戦はどうなるのか。また次回のレポートでお伝えしたいと思います。それでは!