ヘトヘトで漏らした本音から4年…過酷な関門が「最低限」となった大谷翔平 記者が感じた“最高の1年”からの進化

マーリンズ戦で力投したドジャース・大谷翔平【写真:黒澤崇】マーリンズ戦で力投したドジャース・大谷翔平【写真:黒澤崇】

大谷のサイ・ヤング賞は規定投球回に到達できるかが鍵

 何でも出来てしまうスーパーマン・大谷翔平も、ふとした時に「一人の人間」に見える時がある。記者の脳裏に残っているのが、エンゼルス時代の2022年10月5日(日本時間6日)のレギュラーシーズン最終戦だ。

 敵地で行われたアスレチックス戦に「3番・投手」で投打同時出場。5回6奪三振1安打1失点と試合を作り、シーズン投球回数を166回に伸ばして自身初の規定投球回に到達。打者としても規定打席に達しており、いわゆる“ダブル規定”にメジャー史上初めて達成したのだった。

 そんなスーパーマンが、いつ人間に見えたのか。それは試合後の取材対応。大谷から珍しく疲れを感じたことだ。

 例えば、翌2023年3月に迫っていたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への出場意思を問われた時。それまでは溢れんばかりの出場意欲を示していたが、大谷の口調は明らかに“トーンダウン”だった。

エンゼルス時代の大谷翔平【写真:ロイター】エンゼルス時代の大谷翔平【写真:ロイター】

「少しリラックスというか、息抜きもしながらゆっくり考えたいなと思っています」

「一番は体調面を含めて、自分が万全な状態で出られるかどうなのかが、まず一番かなと思うので。ちょっと1回ゆっくりして、体をリセットして、そこからかなと思います」

 2017年のWBCは足首の怪我もあって出場辞退。やる気満々のコメントを聞こえると思っていたから“拍子抜け”した。「栗山監督の依頼を断るのかな……」「いや、まさか……」。囲み取材後、現場の記者間でも話題になった。

 そして初めて到達した規定投球回についても「(投打)2つやっている自分が目指す数字なのかは分からない」と独特の言い回し。とにかく投打の二刀流でフル回転することは、とてつもなく疲れるということがよく伝わってきた。

規定投球回とは…「先発投手の一人として、どのぐらい消化して欲しいかという基準みたいなもの」

 二刀流の完全復活を期す2026年。28日(同29日)の敵地・マリーンズ戦では6回9奪三振5安打2失点(自責1)で今季初黒星。それでも今季は5試合登板して2勝1敗、防御率0.60は堂々のメジャートップだ。

 サイ・ヤング賞の期待も高まる中、何より鍵を握るのが4年ぶりに規定投球回に到達できるか。だが、ドジャースでの規定投球回到達は、エンゼルス時代より間違いなく難易度が上がっている。ドジャースは10月のポストシーズンにベストコンディションを持っていかないといけないチーム。つまり個人タイトルは二の次で、投打でプレーする大谷に決して無理な起用はさせられない。

 2003年にドジャース守護神として55セーブを挙げたエリック・ガニエがサイ・ヤング賞を受賞した例があるが、大谷のような先発投手は、まず規定投球回に乗せないことには話にならない。だからこそ、今、大谷が規定投球回について、どう考えているかを聞いてみたかった。回答はこうだった。

マーリンズ戦で力投したドジャース・大谷翔平【写真:黒澤崇】マーリンズ戦で力投したドジャース・大谷翔平【写真:黒澤崇】

「先発投手の一人として、どのぐらい消化して欲しいかという基準みたいなものはあると思う。それが最低限、規定投球回というもの。何枚のローテーションで回るかにもよりますけど、(規定投球回は)一つの基準にはなると思います。なるべく長い回を投げれば、それだけイニングも消化出来て、中継ぎを含めて全員が健康な状態で回れる状態を作れると思います」

 チーム全員がいい状態でポストシーズンを迎えるためにも、規定投球回の到達は先発投手としての責務で「最低限」。そんな力強い発言に聞こえた。

 ダブル規定に到達した2022年は投手として15勝9敗、防御率2.33。サイ・ヤング賞投票で4位に入った。打者としては打率.273、34本塁打、95打点、OPS.875。MVPこそリーグ新記録の62本塁打を放ったアーロン・ジャッジにさらわれたものの、二刀流選手として「最高の1年」と断言する記者たちは多い。

 2022年の「最高の1年」すら通過点に過ぎなかった。そう確信させるだけの凄みが、今の大谷翔平にはある。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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