【独自】2年連続マイナーで開幕も…ドジャース入団は「最高の選択」 キム・ヘソンが“捨てた”過去、理解した「果たすべき役割」

ドジャース2年目を迎えたキム・ヘソン【写真:黒澤崇】ドジャース2年目を迎えたキム・ヘソン【写真:黒澤崇】

再確認した「自分の役割」、喜びを噛み締めた1か月遅れの贈呈式

 ドジャース入団も、2年連続で開幕はマイナーで迎えた。メジャーで生き残るため、壁として立ちはだかるのは、ムーキー・ベッツやトミー・エドマンといった実績十分の選手たちだ。それでもキム・ヘソンは前を向き続ける。念願の優勝リングを受け取り、より深く理解した「自分の役割」とは何なのか。強大戦力を誇るドジャースでどんな選手になろうとしているのか。直撃取材で、口をついた言葉には力があった。

 27日(日本時間28日)にドジャースタジアムで行われたマーリンズ戦の試合前、ロッカールームでデーブ・ロバーツ監督の演説が始まった。

「彼がチームにいると、他のみんなが、より良い選手になってワクワク感を与えてくれる」。指揮官のこんな賛辞とともに「ここへ来てくれ」と真ん中へ呼ばれたのがキムだ。

「チームメート、スタッフ、フロントオフィス……。球団内のみんなが、君を祝福してワールドシリーズのリングをプレゼントしたいと思っているんだ」。手渡されたのは、昨年のワールドシリーズ優勝リングが入った青い箱だった。

 キムにとっては全くのサプライズ。当時の心境を聞くと「あそこでもらえるなんて聞いていなかったです。ロッカールームで急に始まって……。本当に驚きました」と笑みを浮かべた。

【実際の映像】ロッカールームで突如始まったキム・ヘソンへの優勝リング贈呈式

 2年連続でワールドシリーズを制した昨季、キムは71試合に出場して打率.280、3本塁打、13盗塁を残した。リングを受け取る資格はあったが、チーム揃っての贈呈式が行われた開幕戦当日は3Aオクラホマシティにいた。1か月後のこの日、チームメートから祝福され、ようやく喜びを噛み締めた。

「優勝して、実際にリングを手にするまでちょっと長かったので、改めて実感が湧いてきた気がします」とキム。さらにスピーチを求められて口にしたのが「ドジャースに来たのは最高の選択だった」という言葉だった。

持ち味のスピードを生かし躍動感溢れるプレーを見せるドジャースのキム・ヘソン【写真:黒澤崇】持ち味のスピードを生かし躍動感溢れるプレーを見せるドジャースのキム・ヘソン【写真:黒澤崇】

優勝リングに誓った「自分が果たすべき役割」

 2024年オフ、所属していた韓国プロ野球のキウムから、ポスティングシステムを利用してメジャーリーグを目指した。日本とは違い、韓国からこの制度を利用すると、大リーグ球団との交渉期限は30日しかない。ドジャースと3年総額1250万ドル(約20億円)の契約を結んだのは、交渉期限ギリギリの2025年1月3日。報道でドジャースの名前が浮上したのは契約締結直前だった。

 キムの本職は二塁と遊撃。ドジャースのセンターラインには、ベッツやエドマン、ミゲル・ロハスら実績豊富な選手が揃っていた。実際、東京での開幕戦直前にマイナー落ちとなり、開幕は3Aで迎えた。入団交渉の過程で、マリナーズ、エンゼルス、マーリンズなどの球団が獲得に興味を示していると報じられていたこともあり、母国のメディアやファンからは「もっと出番のあるチームに行くべきだったのでは……」という声もあった。ただ、27歳のキムにはある信念があった。

「レギュラーを取れるかなんて、実際に行ってみなければ分からないじゃないですか。僕はどこへ行ったとしても、同じように競争する立場にあります。『ここへ行けば無条件でレギュラーになれる』なんてことはあり得ないので、そういうことは考えませんでした」

 エドマンの故障で5月に初昇格を果たすと、無我夢中でメジャー1年目を駆けた。出場は71試合にとどまったが、試合に向けての準備を怠ることはなかった。グラウンドに立てば“走攻守”すべてでチームにエネルギーを与えるキムのスタイルは、ドジャースにぴったりだった。その結果、優勝リングを手にし、自身でも手ごたえを感じている。

「自分が果たすべき役割が何なのか、分かった気がします。これからも引き続きチームの助けとなり、貢献して、欠かせない存在になりたいという思いを、改めて心に刻みました」。

 では、キム自身は、ドジャースに何を“与えられる”選手だとイメージしているのだろうか。

好プレーを見せたキムに声をかけるドジャース・大谷翔平【写真:黒澤崇】好プレーを見せたキムに声をかけるドジャース・大谷翔平【写真:黒澤崇】

痛恨の失策翌日、大谷を助ける好プレー…成長の裏に変化を恐れぬ姿勢

「まず、自分の長所を活かすのが一番重要だと思います。僕は足が速い方ですし、ランナーとして出た時に(そこを)より求められる選手なので、たくさん出塁して、そういった役割をしっかり果たさなければならないと思っています」

 ドジャース2年目の今季も、開幕はマイナーで迎えた。ベッツが右わき腹を痛めたことがきっかけで昇格となった。このチームにいる限り、実績も年俸も桁違いのスターたちとの競争を強いられるが「子どもの頃からずっと競争してきたので、良いことだと思っています。競争することで、自分自身が一段と成長できるので前向きに考えています」と、キムの表情に迷いはない。

 世界一のリングを受け取った4月27日(同28日)のマーリンズ戦、キムは「8番・遊撃」で先発出場。3回の守備でゴロ打球をはじき、痛恨の失策は失点につながった。翌日、キムは真っ先にグラウンドに姿を見せると、ロハスからバックハンド捕球のグラブの出し方について助言を受けていた。メジャーの野球に適応するため、常に変化を厭わない。

「米国に来て、全てを変えたと思います。守備も、動きやハンドリングなど、少しずつですが全部変えました。ただこれは体で覚えることなので、言葉で説明するのは少し難しいですね」

 2日続けて遊撃を守った4月28日(同29日)の試合では、大谷翔平投手を助ける守備を見せた。マウンド後方へのボテボテのゴロを猛チャージで捕球し一塁へ送球。アウトにすると、大谷とキムはお互いに一礼し感謝を示した。「早く捕って、早く投げなきゃいけませんからね」。試合後、ロッカールームの椅子に深く体を沈ませた姿は、この舞台で戦う重みと充実感に溢れていた。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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