甲子園で初起用の女性審判員 今夏採用の理由、審判規則委員長「直面する問題を直視」

2026年夏の甲子園、春夏通じて初起用される女性審判員
雲に覆われた聖地にキリッとした女性の声が響いた。2026年8月に甲子園球場で開幕する「第108回全国高校野球選手権大会」で、初めて女性審判員が起用される。日本高野連の尾崎泰輔審判規則委員長は、「高校野球が直面している大きな問題の1つに人口減がある。それは選手もですけど、連盟の先生方、我々審判も人口減の時代に入っていく」と話し、10年後、20年後に対する危機感を露にした。
同大会に登録される女性審判員は、岩男香澄審判員、佐藤加奈審判員、松本京子審判員、森田真紀審判員、和田佳奈審判員の5人。数年後に高校生になる子どもたちや、これから生まれてくる子どものために、現行の公式戦などの環境や、運営体勢を維持する必要がある。その一手として、性別による区別をなくし、スキルが高い審判員が起用された。
「僕からは、男性だから、女性だからというのはありません。より多くの人で高校野球を支えていくと。フィードバックではなくて、“フィードフォワード”。過去の問題点を対処していくのではなく、これから直面する問題を想定して、今何をしておかなければいけないのかということを考えていくみたいなことです」
そう語る尾崎審判規則委員長は、「みなさん、高校野球の審判として“繋いでいく役割”をしてくださっている。そのお気持ちだけでもう十分なんですが、高校3年生の集大成である大会のために、無というか素というか、そういう気持ちで臨んでほしい」とも話し、初起用で注目されるであろう女性審判員も「期待することは彼女たちも同じです」と加えた。
松本京子審判員「緊張するというか、実感がないというか」
4日、5日には甲子園球場で全国審判講習会が行われ、女性審判員も参加。尾崎審判規則委員長の話をメモしたり、真剣な表情でジャッジをしたり、ベテラン審判員へ熱心に質問したりする姿が見られた。
2児の母である佐藤審判員は、中学校教員として働きながら、高校野球の大阪府大会、転居後は東京大会で審判員を務めてきた。2024年に行われた全国審判講習会にも初の女性受講者として参加していた。国際審判員のライセンスを有しており、2017年から「WBSC女子野球ワールドカップ」などでもジャッジをしている“実力者”だ。
講習会を終え、「普段はあまり外審(外野審判)につかないので、そこの動きはすごく確認できました。甲子園独特の風があって、そこは打球に気を付けないといけないなっていうのも確認できました」と佐藤審判員。長年の夢だった男子の甲子園でのジャッジに「1つ、1つ、丁寧にプレーに向き合うことはしっかりしていきたい」と意気込んだ。
同じく国際審判員のライセンスを持つ松本京子審判員も、さまざまな大舞台を経験してきた。それでも「甲子園は違いますね。緊張するというか、実感がないというか……」と言葉に表しにくい感情を吐露した。これまで経験したことのない観客数と、日本の高校野球独特の賑やかな応援に「真ん中に立って、どんな景色が見えるんだろう」と想像をふくらませる。本番までにイメージトレーニングし、冷静なジャッジに努めるつもりだ。
講習会中には、女性審判員が発した渾身の「プレイボール!」に、男性審判員たちから「良い声が出ていますよ」とエールが送られた。「彼女たちは今(高校野球の審判員を)始めたわけではなくて、それぞれ数年前から都道府県で高校野球に向き合っている仲間」と迎え入れた尾崎泰輔審判規則委員長。古くから野球や相撲など男同士による真剣勝負の場は、女性が入ることが許されなかった。この夏、その聖地に女性審判員たちがあがる。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)