“日本記録超え”のドラフト候補は「野性的なタイプ」 韋駄天が残す「1」に見る伸びしろ

早大戦に出場した明大・岡田啓吾【写真:宮脇広久】
早大戦に出場した明大・岡田啓吾【写真:宮脇広久】

昨年12月の侍ジャパン大学代表候補合宿の50メートル走で5秒69をマーク

 今秋ドラフト候補の明大・岡田啓吾内野手(4年)が怪我から復帰し、再び躍動を始めた。驚異の快足と貴公子然とした佇まいに、改めて注目が集まりそうだ。

 16日に行われた東京六大学野球春季リーグの早大1回戦。明大打線は早大のエース・高橋煌稀投手(3年)に6回まで無安打1四球に抑え込まれ、ノーヒットノーラン達成のムードが漂った。1点を追う7回。先頭の1番・田上夏衣外野手(3年)が四球で出塁した後、左打席に入った「2番・二塁」の岡田が試合の流れを変える。

 カウント0-1から、捕手の前に送りバント。半端ではない走力を誇る岡田に、慌てた相手の捕手と三塁手が交錯する間に、悠々と一塁ベースを駆け抜けた。この瞬間、スコアボードに「H」のランプが灯り、高橋煌の記録達成の可能性は消え、明大に同点、逆転のチャンスが広がった。

 岡田は「いつも監督から、(送りバントのサインの時でも)セーフティ気味にやっていいと言ってもらっていて、あわよくば自分も生きるということを頭に入れていました。結果的にセーフになれてよかったと思います」とうなずく。この走塁が、4番・内海優太外野手(4年)の逆転2点二塁打、1年生の6番・為永皓内野手の2ランへとつながっていった。

 岡田の走力は昨年12月、愛媛県松山市で行われた侍ジャパン大学代表候補合宿に参加した際に、広く知れ渡った。光電管を使用した50メートル走のタイム測定で、2022年に同測定を始めてから歴代トップの5秒69をマーク。非公式ではあるが、陸上の多田修平が昨年2月に樹立した日本記録の5秒73を破り、“日本記録を超える”インパクトを残した。

 岡田自身にこの話題を振ると、右手の人差し指を口の前に置きながら、「陸上界から叩かれちゃうので……」と声を潜めるが、おそらく、もう遅い。岡田啓吾の名前は陸上界にも知れ渡っていることだろう。

左手首を負傷、本来は「フルスイングまで8週間はかかる」状態でプレー

 ただ、岡田の盗塁数は通算で昨秋に記録した「1」のみ。走力を野球に生かしているとはいえず、大きな“伸びしろ”のままになっている。

 試合は4-4の同点で迎えた延長10回、明大の9番・津田基外野手(4年)が中前へ勝ち越し適時打。続く1死満塁のチャンスで打席に立った岡田は、早大の左腕・香西一希投手(4年)が外角低めに投じた変化球に食らいつき、左中間へ2点二塁打。勝利を大きく引き寄せた。

 試合後、報道陣に語った「打ったのはスライダーかな……。自分はこういうことをあまり覚えていない野性的なタイプなので、球種を聞かれても、たぶんスライダーだったとしか……」という受け答えが印象的だった。

 5月2日の立大1回戦で二塁打を放ち滑り込んだ際、左手首を痛めた。TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷と診断され、同2回戦と3回戦を欠場。岡田は「試合になるとアドレナリンが出るので、痛みは気にならない」と気丈に話すも、「処置をして出場していますが、それをしなければ、フルスイングできるまで多めに見て3か月、短めに見ても8週間はかかるといわれています」と厳しい状態でプレーを続けている。

 戸塚俊美監督が「やはり岡田が戻ってくると、二遊間の守備を含めてチームが引き締まりますね」と信頼を寄せる中心選手だ。

 端正な顔立ちで、近くで見るとまつ毛が非常に長い。「小学校低学年の頃までは、髪も長かったので、よく女の子に間違われました」と苦笑するほど。プロ入りすれば人気が出そうではある。「4年生がぐっと中心になってやっていこうと、みんなで話しているので、その歯車として1試合、1打席に魂を込めたいと思います」と、岡田は表情を引き締めた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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