軟式出身&一般入試で六大学 TOEIC905点の秀才…4年生でエースに急成長、“悩ましい進路”

明大戦で力投した法大・助川太志【写真:加治屋友輝】
明大戦で力投した法大・助川太志【写真:加治屋友輝】

明大1回戦に先発し延長11回完投、133球4安打無四球1失点

 異例の高校軟式野球部出身ながら、エースの座へ駆け上がった――しかし、最後は涙の敗戦。法大の助川太志(すけがわ・たいし)投手(4年)は大学最終学年にして急成長を遂げ、卒業後の進路を巡り、新たな悩みを抱えている。

 東京六大学野球春季リーグで、23日の明大1回戦に先発した助川は、相手の強力打線に付け入る隙を与えなかった。延長10回を終えた時点で、2安打無四球無失点。スコアは0-0。元プロの法大・大島公一監督が「頼もしかった。代えるつもりはありませんでした。疲れている様子は感じませんでしたし、ボール自体もよかったので、行けるところまでと思っていました」と最大限の賛辞を送る快投だった。

 スピードは最速でも140キロ未満。きれいな回転のストレートは1球もない。「自分の球速ではこの東京六大学の舞台で通用しないので、カット系の回転をしっかりかけたボールを真っすぐのつもりで投げている」のがミソだ。これにスピード、変化量、角度の違う数種類のスライダーをまじえ、相手打者を幻惑した。

 相手の明大・戸塚俊美監督は「真っすぐに差し込まれていました。両サイドをきっちり突いてくることも、真っすぐが少し変化することも、データでわかっていましたが、実際の打席でとらえきれませんでした」と脱帽するしかなかった。

 しかし11回、ついに“破綻”が訪れる。簡単に2死を取ったが、明大の7番・福原聖矢捕手(4年)のバットの先に当たった打球に不規則な回転がかかり、内野安打となったのがケチのつきはじめ。続く左打者の光弘帆高内野手(4年)に、内角高めに浮いたカット系のストレートを右翼線へ運ばれ、一塁走者の長躯生還を許した。

 結局この1点が致命傷となり、チームは完封負け。11回4安打1失点の力投が報われなかった助川はゲームセット直後、チームメートに肩を抱かれながら悔し涙を流した。

“元プロ”大島監督も絶賛「当初の予想を超え、エースになってくれた」

 茨城・茗渓学園高時代は軟式野球部に所属。一般入試で法大に進むと、全国レベルの実績を持つ選手たちがひしめく硬式野球部の門を叩いた。

 昨秋に3年生でようやくリーグ戦デビューを果たし、リリーフで8試合に登板。今季は投手陣の駒不足もあって、抜群の安定感を買われ、開幕から1回戦の先発を任されている。大島監督は当初、経験の浅い助川には長いイニングを求めず、「相手の打線がひと回りか、ふた回りするのをメドに」降板させていた。ところが、あれよあれよという間に投球回数を伸ばし、今月9日の東大1回戦では過去最長の6回1/3、過去最多の94球を投げ1失点。そしてこの日は延長11回、133球を投げ切ってしまった。これだけ投げて無四球の制球力も光った。

 大島監督は「助川には申し訳ないけれど、当初の予想を超える活躍です。ウチのエースになってくれました」と最敬礼。助川自身は「気付いたら、そんな球数になっていました。丁寧に投げることができたので、すごい疲労感というわけではありません」と頼もしい。一方で「実は昨晩よく眠れず、体の状態はよくありませんでした。逆に、それで余分な力が抜け、これだけのイニングを投げられる所以になったのかなと思います」とも付け加えた。

 眠れなかった理由は、試合前日の緊張だけではなかったようだ。学業では、専門科目の全講義が英語で行われるグローバル教養学部(GIS)に在籍。TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)905点の秀才でもある。もともと「卒業後は英語を生かせる仕事に就きたい」と考えていたが、最近の急成長で野球を続ける選択肢も浮上した。悩みは深い。

 この日の試合終了後は、敗戦のショックも加わり、具体的な言及を避けつつ「(卒業後の進路は)一切何も決まっていません。人生大変で、うまくいかないことばかりです」と嘆息した。

 今季成績は7試合に先発し1勝2敗、防御率はリーグ4位の2.15(23日現在)。仮に法大が24日の明大2回戦に勝ち、決着を3回戦に持ち込んだ場合、助川以上に信頼できる先発候補はいない。大島監督は「もちろんコンディションには配慮しますが、現時点では助川に行ってもらいたいと思っています」とうなずいた。

 入学当初には想像もしていなかった、重要なポジションを得た助川。「チームに必要とされる場面があれば投げる準備をして、今度こそチームを勝たせるピッチングをしたい。篠木(健太郎投手)さん(法大OBで現DeNA)のような絶対的エースへの道のりは遠いですが、チームメートに信頼される投手になれたら嬉しいです」と気合を入れ直した。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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