7回制は「面白くなかった」 伝統校の監督が力説…見えづらい“変化”「突っ切れる」

鳥羽・松下浩司監督【写真:喜岡桜】
鳥羽・松下浩司監督【写真:喜岡桜】

鳥羽の松下監督、7回制は「あっさりと終わってしまう」

 2020年夏、新型コロナウイルスの蔓延により「第102回全国高校野球選手権大会」の中止が決まった。それを受け、埼玉県、京都府、静岡県、福岡県(西日本短大附が属した筑後地区1次予選のみ)の4県は「7イニング制」による独自大会を実施。その大会に出場した伝統校・鳥羽(京都)の松下浩司監督に、2028年春の選抜大会から導入が検討されている「7イニング制」について聞いた。

 京都では2020年、7月11日から平日を除く8日間に渡り、約80校の参加校を8ブロックに分けたトーナメント方式の独自大会が、無観客で行われた。できるだけ多くの選手に出場機会が与えられるように、試合ごとにベンチメンバー20人を入れ替えることができ、さらに、5回10点差でコールドゲーム、8回からはタイブレークが採用された。

 松下監督は、3年生を最後の公式戦に臨ませることができたありがたさを噛み締めつつ、「7イニング制」の試合について「面白くなかったですよ。決勝まで3試合しかなかったですが、最後まであっさりと終わってしまう印象を受けました」と振り返った。

 これまでと変わらない満足感、達成感を得られる試合をするには「7イニング制」の戦い方を研究し、練習内容などの見直しも必要だろう。「うちは(9回を前提に)試合後半の勝負に強くなれるように、体づくりや食事指導などに取り組んでいる」と松下監督は説明。そのため、イニング数が短くなるのであれば、選手自身が描く引退までの成長プラン、指導者による育成計画などを「ガラッと変えていかないといけない」と頭を抱えた。

7回制導入だと「最後まで突っ切れるんですよね」

 普段の部活動では「9イニング制」を戦い抜くことを前提として、夏の暑さにも負けない体力、集中力を養っている。とはいえ「疲れてくることはありますし、高校生なので気持ちが沈むこともあります」。心身の変化は、特に8、9回の試合終盤に現れることが多く、チームでカバーし合いながら踏ん張りどころを越えていくことも、野球の醍醐味だと松下監督は語る。

 実際に昨夏、心が震える展開を経験したばかりでもある。京都外大西と対戦した準決勝。4点ビハインドで迎えた9回裏、2死の場面で4番・横谷乙樹内野手にサヨナラ満塁逆転ホームランが飛び出した。8-7で前年夏のリベンジを果たし、10年ぶりの決勝進出を決めたのだ。劇的な幕切れに、松下監督は目に涙を湛えていた。

 こういった感極まるドラマは「チームごとにある攻め方、耐え方などの戦術であったり、メンタルだったり、いろんな要素が噛み合って(生まれて)いると思うんです」と指揮官。続けて「これこそが、力の差があるチームに挽回できたり、勝ったりする理由だと思います」と、経験をもとにした持論を語った。最後に「7イニング制が定着したら、そのうちドラマは出てくるでしょう」とも付け加えた。

「7イニング制」になっても、踏ん張りどころがなくなるわけではない。ただそれだと、高校球児の体力や集中力に変化が出づらく「最後まで突っ切れるんですよね」と松下監督は危惧する。それが「あっさりと終わってしまう印象」の正体である。「7イニング制」が導入されると、野球特有の“絆を育くむ機会”が得づらくなるかもしれない。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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