3Aで防御率7.17の絶望→「人生全てが変わった」72球 ドジャースの“一流環境”で激変…WSで英雄になるまでの150日間
キャリア初セーブをあげたドジャースのウィル・クライン【写真:黒澤崇】昨季ドジャースに加入したウィル・クライン、DFA2日後に訪れた転機
1年でキャリアは劇的に変わる。19日(日本時間20日)の敵地でのパドレス戦でメジャー初セーブを挙げた26歳のウィル・クライン投手は、昨季途中からドジャースに加入。ワールドシリーズ(WS)第3戦では延長15回から4回を投げ抜く力投で勝利を手繰り寄せ、一躍英雄となった。今年はブルペンに欠かせぬ存在に成長。マイナーで防御率7点台のどん底から覚醒した理由に、独占インタビューで迫った。
「答えを探していました。いろんな方向を見すぎていたのかもしれません」
2025年5月30日(同31日)。クラインはワシントン州タコマで途方に暮れていた。マリナーズ傘下3Aでこの年22試合目の登板。一発を浴びるなど、1回2安打1失点を喫した。見届けた観客は7218人。防御率7.17となった右腕は翌日、メジャー出場前提の40人枠から外された。1月にアスレチックスから受けたのに続き、5か月間で2度目のDFA。明るい未来など、見えるはずもなかった。
2日後の6月2日(同3日)、転機が訪れる。ジョー・ジャッキーズ投手とのトレードでドジャースに移籍が決まった。「あれは僕の人生で起きた最高の出来事ですね」。ただ再起のチャンスを得ただけではない。新たな環境は、クラインの意識を大きく変えた。
WS第3戦、同点の延長15回からドジャースの10番手として登板し、4回無失点と力投したウィル・クライン【写真:アフロ】伝説となった72球「こんなことが待っているなんて想像もしなかった」
2025年10月27日(同28日)。7218人の前でうなだれた日からちょうど150日。青く染まったドジャースタジアムの真ん中で、クラインは5万2654人の喝采を一身に浴びた。
「タコマに座っていた時には、数か月後にこんなことが待っているなんて想像もしませんでした。クレイジーですよね」
同点の延長15回からドジャースの10番手としてマウンドへ。もう投手は残っていない。なかなか決着はつかず、前日に105球完投勝利をあげた山本由伸投手がブルペンで準備を始めるほどの非常事態。“無名”だった右腕は、100マイルに迫る剛速球とスイーパーを武器に、強打者を次々にねじ伏せていった。
変わらぬ謙虚な姿勢「天狗になったりしないように」
「家では妻と一緒に、以前と同じように振る舞うように心がけています。調子に乗ったり、天狗になったりしないように」。照れくさそうに笑う姿は謙虚そのものだ。「でも、野球面では今年もチャンスをもらえましたし、間違いなく自信がつきました」。今季は開幕からブルペンの一角を任され、5月19日(同20日)のパドレス戦でキャリア初セーブを挙げるなど、勝ちパターンを担っている。
「ここまで長い道のりでした。昨年の今頃は、数か月先のことすら見通せないような状態でしたから。初セーブを記録できて、本当に最高です」
一瞬の輝きで終わるつもりはない。幸いにも、お手本はたくさんいる。
(鉾久真大 / Masahiro Muku)

