ピッチクロックは日本に必要? あまり語られない「大きな負担」…“経験者”明かすリアルな声

台湾プロ野球で審判員を務める木内九二生さん【写真:本人提供】
台湾プロ野球で審判員を務める木内九二生さん【写真:本人提供】

審判員の木内九二生さんは今季から台湾プロ野球

 3月に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表は過去最低のベスト8敗退に終わった。大会では試合時間短縮を目的としたピッチクロックが採用されたが、NPBの選手たちにとっては不慣れなルールでもあり、日本球界でも導入の是非を巡る議論が続いている。台湾プロ野球(CPBL)では2024年からピッチクロックが本格導入され、2026年シーズンからはさらに制限時間が短縮された。今季から台湾で審判員を務める木内九二生さんが、現場で感じる“リアル”を明かした。

 木内さんはNPBで28年間にわたり審判員を務め、今季からはCPBLの舞台でジャッジを続けている。台湾では走者なしで18秒、走者ありで23秒以内に投手が投球動作へ入らなければならない。メジャーリーグや韓国プロ野球(KBO)でも導入されている世界的な流れに対し、「日本でも。という考えは当然あると思います」と理解を示した。実際、本格導入前の2023年には平均3時間22分だった試合時間が、2025年には平均2時間56分まで短縮されるなど、一定の成果も表れている。

 一方で、制度の意図と駆け引きのバランスについて考えさせられる場面もあるという。

「私自身も今年初めてピッチクロックを経験していますが、ピッチャーには『時間内に投げよう』という意識が強く働いており、日本よりも試合のテンポが速いと感じています。バッターも打席を外す場面は少ないです。その一方で、ピッチャーが投球動作に入り、バッターもタイミングを合わせて構えているにもかかわらず、ある外国人ピッチャーが制限時間ぎりぎりまでボールを持ち、なかなか投げない場面もありました」

台湾プロ野球で審判員を務める木内九二生さん【写真:本人提供】
台湾プロ野球で審判員を務める木内九二生さん【写真:本人提供】

ピッチクロックを使って“駆け引き”「少し考えさせられる部分も」

 さらに、審判側にも独特の緊張感があるという。

「こちらも投球に備えて準備を始めるので、そこから長くなると、ずっと呼吸を止めているような感覚になります。打たれたくない中で、ピッチャーもさまざまな工夫をしているのでしょう。もちろんルールの範囲内ではありますが、ピッチクロック本来の趣旨を考えると、少し考えさせられる部分もありました」

 ピッチクロックの運用は選手だけでなく、審判側にも大きな負担をもたらしている。CPBLでは控え審判がタイマー操作を担当しており、その責任は決して軽くないという。

「ピッチングコーチやキャッチャーがタイムを取ってマウンドへ行くと、与えられる40秒も計測します。ボタンを押し忘れたり、タイミングを間違えたりすると大変なことになる。なかなか大変です」

 世界的に導入が進むピッチクロック。試合時間短縮という成果が期待される一方で、現場では新たな駆け引きなど課題も浮かび上がっている。実際にCPBLの現場でジャッジを続ける木内さんの言葉からは、日本で導入する際には制度や運用面を十分に整備し、本来の目的である「試合時間短縮」のために機能させる必要性が見えてきた。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

RECOMMEND