増加するスイーパーの投球割合…チーム内で懸念は?
開幕から二刀流としてプレーを続けるドジャースの大谷翔平投手は、投手として6勝、防御率0点台と打者をねじ伏せる投球を披露している。一方で、5月以降注目されているのが、宝刀スイーパーの投球割合が激増しているということだ。
二刀流として球界を席巻した2021年から、横曲がりの大きいスイーパーは大谷の武器だった。2022年、2023年はフォーシームよりもスイーパーの方が投球割合が多かったが、2023年8月に右肘靭帯を損傷。2度目の右肘手術を余儀なくされた。
肘を内側に強く捻るスイーパーのリリースは、近年増加するトミー・ジョン手術の原因ともいわれている。大谷は3度目の手術を受けることになった際は投手断念の可能性も口にしていた。
大谷は昨年復帰後の投球割合は22.8%。今季4月は21.6%に留まっていたが、5月は39.4%となっており、フォーシーム(44.9%)と2球種で投球を組み立てるようになった。
この“スイーパー多投”の状況を、チーム内ではどう考えているのか。投手コーチに聞いた。
「私たちも注視している部分ではある」と語るのはアシスタント投手コーチを務めるコナー・マクギネス氏だ。
「彼は試合で勝つために必要な球種をなんでも投げるタイプです。ただ、以前に彼がスイーパーを多投していた時期との違いを挙げるならば、昔は毎回『100%全力で』その球を投げていたという点ですね」
マクギネスコーチが指摘するのは、今季は全てのボールで全力投球していない点だ。4日(同5日)のダイヤモンドバックス戦では、先頭ぺルドモに対し、初球は93.4マイル(約150.3キロ)のフォーシームから入った。それ以外にも今季は投球、打撃において1イニングでも長く投げるために、抜けるところでは抜く――。
大谷は6回を投げて降板した同戦後に「ストレートのバリエーションを落とした方が有効な時もありますし、その結果長いイニングを投げる(ことにつながる)。できれば7イニング行きたかったですけど」と振り返っている。
全ては自分が1イニングでも長く投げ、チームを勝たせる確率を高くするためという考えから来ていた。さらに今季はテークバックのタイミングをずらすなど、ボール以外でも打者の打ち気を逸らす工夫を行っている。マクギネスコーチは続ける。
「野球のボールを投げること自体が、体にとってあまり健康的な行為ではないですからね(笑)」
「今年、彼は私たちが『スロットリング』と呼ぶ投球をしています。ある時は81マイル(約130キロ)のスイーパーを投げ、時には88マイル(約141キロ)までスピードを出す。ファストボールも93マイルから100マイルまで幅がある。つまり、そのイニングの状況や、目の前の打者を打ち取るために何が必要かに応じて、球速を意図的にコントロールしているんです」
「スイーパーの使用率が上がっているのは確かですし、それは彼が打者との勝負にこだわるからですが、非常に正しいアプローチで臨んでいるとは思います。出力を調整して緩急をつけることで、以前のように肘へ過度な負担がかからないようにしています」
“スイーパーが危険”という考え方については、コーチの一人としてどのように考えているのか――。
「怪我に繋がる可能性はゼロではありません。ただ、イエスかノーかの極論を言うなら、そもそも野球のボールを投げること自体が、体にとってあまり健康的な行為ではないですからね(笑)。何がどう怪我に結びつくかは誰にも正確には分かりません。しかし、彼は素晴らしい肉体を作り上げていて、負荷への耐性が非常に高い。私たちのトレーニングスタッフや医療スタッフも彼を完璧にサポートしています。私たちは彼を全面的に信頼しています」
例年よりも被打率は大きく減少し、今季ここまででは被打率.070を誇る“魔球”スイーパー。サイ・ヤング賞を狙えるシーズンの滑り出しとなった中で、どう使いこなしていくのかに注目だ。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)