不調でもNPBスカウト驚愕…慶大左腕の“謎直球”の正体 勝てる投手へ、描くプロの道

早慶戦3連投の疲労が残る中…渡辺が6回2安打10K無失点の快投
東京六大学の奪三振王が貫禄を見せつけた。10日に行われた第75回全日本大学野球選手権記念大会の2回戦・函館大戦で、慶大の最速151キロ左腕・渡辺和大投手(4年)は6回2安打10奪三振無失点と好投。今秋のドラフト候補がネット裏のスカウト陣をうならせた。
決して調子は良くなかった。この日のMAXは147キロ止まり。というのも、東京六大学リーグで5季ぶりの優勝が懸かっていた早慶3連戦(5月30、31、6月1日)に3連投。3戦目にも先発して8回124球11奪三振無失点の快投を演じ、天皇杯を奪還した疲労が残っていた。「僕としては大丈夫だと思っていたのですが、思ったより球が行っていなかった」のも無理はない。
それでも2回を3者三振に仕留めるなど、6回91球2安打10奪三振1四球と付け入る隙を与えず、相手に得点を許さなかった。「調子が良くない中、球速だけでなくタイミングを考えて、打者自体は真っすぐで差し込めていたと思います。相手に的を絞らせない投球もできていたと思います」という頭脳的な投球だった。
昨年は春、秋とも防御率4点台と振るわなかったが、最上級生となった今春のリーグ戦で一躍、防御率1.28(9試合7勝2敗)をマークし最優秀防御率のタイトルを獲得した。シーズン65奪三振もリーグ断トツで、9.00以上ならエース級といわれる奪三振率(9イニングあたりの平均奪三振数)は10.38に達した。
急成長の要因の1つは、握りを変えて大幅にアップデートしたツーシームにあった。今年から新たに就任した上田誠投手コーチ(神奈川・慶応高前監督)の指導の下、春のキャンプ、オープン戦で試行錯誤を重ね、「リーグ戦開幕(4月11日)の直前になって“これだ”という感覚が見つかりました」と振り返る。
「チームを勝たせる投手が自ずとプロに行けると思っている」
巨人の斉藤宜之スカウトも、渡辺和の成長に目を見張った1人だ。「(2月下旬~3月上旬の)薩摩おいどんリーグで見た時には、そこまで素晴らしい印象はなかったので、驚きました。確かに、キレのあるストレートに加え、あのツーシームがいいですね。ストレートの軌道で来て、落ちる。本人は意識していないかもしれませんが、真っすぐ落ちる時と、シュート回転しながら時があって、打者はなおさら戸惑うと思います」と指摘。「三振を取れるところは大きな魅力です」とうなずいた。
香川・高松商高時代は、巨人にドラフト1位で入団した浅野翔吾外野手と同級生。自身も今秋ドラフトで上位指名を受けてのプロ入りを目指しているが、「チームが勝つことが絶対優先で、“自己チュー”なピッチングをしてはならない。チームを勝たせる投手が、自ずとプロに行けるのだと思っています」と強調する。チームは11日の準々決勝・日体大戦も勝利。2021年以来5年ぶりの大学日本一へはあと2勝だ。
今秋ドラフト候補の大学生投手は、今大会で8回10奪三振無失点の快投を演じた関大・米沢友翔投手、中1日で2度先発し好投を続けた大商大・星野世那投手、今大会には不出場ながら、昨秋の明治神宮大会1回戦で10者連続三振の大会記録を樹立し注目された立命大・有馬伽久投手ら、即戦力になりそうな有望左腕がめじろ押しだ。その中でも渡辺和は一際まばゆい光を放とうとしている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)