“大谷超え”大商大3年の資質 プロでも目指す二刀流…こぼれた涙、後押しする指揮官の言葉

大商大・中山優月【写真:加治屋友輝】
大商大・中山優月【写真:加治屋友輝】

「2番・投手」で出場…投げては7回138球、打っては2打数2安打2四球

 ある意味で、大谷翔平投手を超える“三刀流”の大学3年生が台頭し、プロを目指して成長を続けている。大商大の中山優月(ゆづき)選手。大学レベルでは珍しく、投げて、打って、遊撃もしくは二塁の守備にも就く。

 11日に行われた第75回全日本大学野球選手権記念大会・準々決勝の東北福祉大戦に「2番・投手」でスタメン出場し、投げては7回138球の力投。打っては絶妙のバント安打を含め2打数2安打2四球で“出塁率10割”。8回からはセカンドの守備に就き、走者として二盗まで決め、思う存分躍動した。

「あれだけ打てて、投手としても150キロを出せる。非常に面白い選手です。(プロでも三刀流として)十分チャレンジできるものを持っていると思います」。ネット裏席で中山の活躍を見守り、こう評したのはDeNAの八馬幹典アマスカウティンググループリーダーだ。

 初回の攻撃で、早速スタンドをどよめかせた。1死走者なしで四球を選び出塁した中山は、2死後、4番・真鍋慧外野手(3年)のカウント1-1からの3球目にスタートを切り、見事に二塁を奪った。「盗塁のサインは出ていませんでしたが、タイミング的に行けると判断しました。ヒット1本で1点を取れるように、次の塁を目指して必死でした」と振り返る。

 その裏に立ち上がりの投球が控えているのだから、体力を温存することを考えても良さそうなものだが、中山本人は「あそこは1点を取ることが優先です。あの場面で投げることを考えているとすれば、まだ体力が足りないということ。攻撃は攻撃、ピッチングはピッチングで分けて考えています」と一切迷わなかった。

 右投げ左打ちで身長176センチ、76キロ。大柄とは言えない体格のどこに、そんな体力が秘められているのだろうか。4回先頭の第2打席では、チーム初ヒットを右前に放った。6回無死二塁のチャンスでは、二塁手を狙ってプッシュ気味のセーフティバントを敢行し、相手投手が伸ばしたグラブを弾いて内野安打。味方の得点につなげた。

大商大・中山優月【写真:加治屋友輝】
大商大・中山優月【写真:加治屋友輝】

1回戦ではピンチで遊撃からマウンドに上がり、殊勲のリリーフ登板

 投手としても最速152キロを誇る剛腕だ。8日に行われた1回戦・九産大戦には「1番・二塁」でスタメン出場したが、2-2の同点で迎えた7回、エースの星野世那投手(4年)が相手に1点勝ち越され、なおも2死満塁のピンチを招くと、この窮地にリリーフでマウンドに上がった。残りの2回1/3を5奪三振1失点に抑え、チームに逆転勝ちをもたらしたのだった。

 だが、破壊力抜群の東北福祉大打線を相手に先発したこの日は、少々勝手が違った。7回138球7奪三振の力投だったが、8安打を浴びた上、7四球を献上し6点を失った(自責点5)。8回には二塁の守備に回ったが、救援陣が打たれ、チームは結局2-9の8回7点差コールド負けを喫した。

 中山は試合後、目を潤ませ、時おり声を震わせていた。「悔しいです。全国トップレベルの打者になるとスイングが強く、簡単には空振りしてくれない。決め球を磨き、追い込み方も見直して、もっといい投手になって(全国大会の舞台に)帰ってきたいと思います」と言葉を絞り出した。

 奈良・智弁学園高3年時には、エース兼遊撃手兼3番打者として甲子園に出場。大商大進学時には「大学野球のレベルもわからなかったですし、投手でいくのか、野手でいくのか、不安いっぱいでした」と振り返る。

 そんな中山の背中を押したのが、富山陽一監督だった。「入学してひと言目に、富山監督から『両方やってこそ、お前やぞ』と声をかけていただきました。両方やらせていただけることは凄くうれしかったですし、その言葉で覚悟が決まりました」と中山は回想する。

「大谷選手は偉大過ぎて、目標にすることもできません。『プロに行きたいのなら、(投手か野手か)どちらかに絞った方がいいのではないか』という声も聞こえてきますが、プロでも両方できればいいと考えています。自分のスタイルで道を切り開いていければ、それが一番の成功だと思います」と“大志”を抱いている。

富山陽一監督「マスコミにもっと取り上げてもらわなあかんね」

 チームの全体練習は実戦的な練習が多く、自ずと野手として多くの時間を割いているが、ピッチング練習も自主練習でカバーしている。「オープン戦の試合後にあえて投球練習をしたりして、疲れた状態でもパフォーマンスを出せるように工夫しています」とうなずく。

「自分はあくまで日本一になるために、この大学に入ってきました。(投手と野手の)両方をやることがチームのためになるのなら……という気持ちでやっています。結果的に、その先でプロにつながればいいなと思っています」と強調することも忘れない。

 大商大は中山の持ち味を生かすため、あえてDHを使わずに試合に臨んだ。富山監督も引き続き、パイオニアとしてのチャレンジを後押ししていく構えだ。「彼はよく練習するしね。まだまだ、もっと面白い存在になりますよ。マスコミの皆さんにも、これからもっと頑張って取り上げてもらわなあかんね」と目を細めた。

 この秋、もしくは来春、中山がどんな姿で全国大会の舞台に帰ってくるのか、楽しみしかない。日米のプロ球団がこぞって腰を浮かすような事態になるかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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