コナー・マクギネス投手コーチ補佐が語る佐々木朗希の成長
苦しんだ1年目を乗り越えて、佐々木朗希投手が復活を遂げようとしている。メジャー2年目の今季は生命線でもある剛速球が復活。その裏にはドジャースと佐々木が計画した確かなプランがあった。成長の過程を、コナー・マクギネス投手コーチ補佐が明かす。
6月12日(同13日)の敵地ホワイトソックス戦では最速100.7マイル(約162キロ)で、フォーシームの平均球速は今季最速の98.8マイル(約159.0キロ)を計測。これはロッテ時代の2023年に記録したフォーシームの平均球速159.1キロとほぼ同じだ。最速という面ではロッテ時代には劣るが、確実に代名詞の剛速球を取り戻しつつある。
「昨年は新しい環境ということや、怪我からの復帰だったり、多くの要素と戦っていた。ここでの野球に慣れるための“生みの苦しみ”だったんだろう」。復活をそばで見てきたマクギネス氏は、佐々木を慮る。
昨年、大きな期待を受けてメジャーデビューした佐々木は、8試合に先発して防御率4.72。球速も周囲が望んだレベルではなかった。5月には右肩インピンジメント症候群のため離脱。8月からは3Aでリハビリ登板に臨んだが、最速は150キロ後半に留まり、デーブ・ロバーツ監督は当時、佐々木の質問をされるたびに表情を曇らせ苦言を呈していた。
しかし9月9日(日本時間10日)、最後のリハビリ登板(3Aサクラメント戦)に臨んだ佐々木は、球速が復活。「いろいろ過去の動画を見て振り返った」とのことで、フォームの微調整によって最速は前回登板の156キロから162キロに激変した。以降はリリーフとして、ポストシーズンでは最速101.4マイル(約163.2キロ)をマーク。ワールドシリーズ制覇のピースとなった。
短いイニングで全力を尽くすリリーフとはいえ、フォームの修正により剛速球が復活。しかし、今季を迎えるにあたって昨年後半のフォームは“捨てて”いた。
「今季目指しているフォームは(昨年とは)また別物なので」。佐々木は5月23日(同24日)のブルワーズ戦後にこう語った。
長い手足を起用に使って放たれる剛速球。一方で少しのズレがパフォーマンスに大きな影響を及ぼす。昨年序盤はインピンジメント症候群の影響もあって思い切って腕を振れず、速球を投げることに不安を抱くようになっていた。
佐々木が言うように、昨年後半と今季のフォームは大きく違う。昨年はセットポジションの際に足幅を広げ、深く沈みこんだ形から始動。膝の反動も使って足と腕を振り上げて勢いをつけるフォームだった。
ただ、チームも本人も思い描くのはロッテ時代に見せた先発マウンドで無双する姿。先発として高い出力を出し続けるという“復活”を目指した。
マクギネス氏は「昨年のフォームは彼にとって一種の『応急処置』のようなものだったと思う。今、彼が追い求めているのは先発での長期的な成功と、自分自身がしっくりくる快適さだ」と説明する。
今季のフォームはロッテ時代に近づき、セットポジションの足幅は狭く、膝も深く折らず立った形になっている。今シーズン3登板目からはプレートの位置も三塁側から中央に変え、セットポジションに入る際のグラブも動かし方も徐々に変化している。
フォーシームの平均球速はロッテ時代と同じレベルに
反動の大きなフォームを辞めた上で、出力が安定しているのはフィジカル面の成長も大きい。マクギネス氏は「スミス(ストレングスコーチ)との取り組みは、間違いなく今の成功の大きな要因になっている」と明かす。
「やみくもに高重量を扱うのではなく、段階的に体を大きくし、負荷への耐性を作っていくという非常にスマートな計画を立てて進めてきた。それは見た目にも表れている。パンツの隙間がなくなるほどの彼の脚(の太さ)を見れば、彼が格段に強くなり、素晴らしい状態にあることが分かるよね」
トレーニングを担当するトラヴィス・スミスコーチによると、現在佐々木の体重は4キロほど増加して約93キロにまで上がってきているという。
2023年には日本人最速タイとなる165キロ(約102.5マイル)を計測。今後は最高球速を上げていくことにも期待がかかるが、マクギネス氏は“待った”をかける。
「もちろん、誰もが派手な球速の数字を見たいだろうけど……。彼は非常に賢いアプローチを取っている。多くのイニングを投げつつ、試合を通して球威を維持できるように取り組んでいる。その自信が深まるにつれて、登板を重ねるごとに球速も自然と上がってきている。その姿を見るのは嬉しいね。とはいえ、常に102マイルを出し続ける必要があるかと言えば、打線を抑えるために必ずしもそこまでの球速は必要ないと思う。もちろん、ここぞという場面でそのギアを入れられるというのは、非常に大きな価値があるけどね」
「私は今の彼のやり方が気に入っている。シーズンはまだ長く、マラソンのようなものだから。今でも常時97~99マイル(約156~約159キロ)を出し、何度か100マイル(約161キロ)にタッチしているんだから。無理に球速を作り出そうとしたり、強制したりするよりも、この自然なプロセスに従っていけば、自ずとその域に達するはず」
5月から6月にかけて、佐々木のマウンドさばき、試合後の表情からは自信の深まりが感じられる。若くして臨んだメジャーの舞台。足踏みはしたが、地に足をつけて前進している。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)