天国に捧げる力投…右腕を支える“亡き母の言葉” 帽子の裏に「不撓不屈」と記したワケ

岩倉・佐藤海翔【写真:横井洸太】
岩倉・佐藤海翔【写真:横井洸太】

岩倉・佐藤海翔は5回のピンチから登板…4回2/3で2安打無失点の力投で勝利に貢献

 第108回全国高校野球選手権・東東京大会は13日、神宮球場で3回戦が行われ、第2シードの岩倉が足立学園との初戦に1-0でサヨナラ勝ちした。5回の大ピンチには主将でエースの佐藤海翔投手(3年)がリリーフ登板して力投。執念の力投で勝利を引き寄せた。昨夏、母を亡くした右腕は、ピンチの場面に帽子のつば裏に刻む言葉に目をやった。

 岩倉は先発の2年生左腕・小林辰生投手が4回まで無失点投球。しかし味方打線も足立学園先発の栗原司投手(2年)から得点を奪えず、投手戦が続いていた。

 迎えた5回、小林が1死二、三塁のピンチを招き、7番・八木原有真内野手(2年)のカウントが1-2となった時、豊田浩之監督は思い切りよく、大黒柱の佐藤にスイッチした。指揮官は「先に点を取られたら、ちょっとキツイと感じていました。内野ゴロでも点を取られる場面だったので、三振が欲しかった。三振を取れるピッチャーということで、佐藤に託しました」と説明する。

 しかし急きょマウンドに上がった佐藤は、3球続けてストライクが入らず、四球を与えて1死満塁と追い込まれてしまう。ここで佐藤は帽子を取り、つばの裏に視線を送った。

「少し浮足立っていました。つばの裏に書いた言葉を見て、一回落ち着こうと思いました」。そこには「母と共に想いは生き続ける 不撓不屈」と自ら書き込んだ言葉がある。「苦しい時が絶対に来ると思っていました。この言葉を見れば大丈夫だと思えるように、書きました」。

 佐藤は昨年、母・友喜子さんを胃がんで亡くしていた。夏の東東京大会前から闘病。岩倉は決勝まで進出したが、惜しくも関東第一に敗れた。甲子園大会の開会式の日が命日だった。

「最後まで力を振り絞ってくれたのかなと思います。すごく母らしいなと感じました」。秋に新チームが結成されると帽子に言葉を書き込んだ。「たとえ亡くなっても、魂や思いは生き続けるし、歳を取りません。甲子園やプロ野球へ行くという思いも生き続ける、という意味を込めました」と振り返る。

母に似た性格「受け継がれているのかなと」

 母の職業は教師で、どんなときも前を向いて生きる性格だった。「親子なので、受け継がれているのかなと思います。自然とメンタルが強くなり、元気になったのかなと思います。自分はメンタルだけは絶対に負けない自信があります」と思いを馳せた。

 マウンドで気持ちを切り替えた佐藤は、鬼気迫る表情で相手打者に立ち向かった。連続三振でピンチを切り抜けると、その後も最後までマウンドを守り抜いた。

 昨秋の東京都大会は3回戦敗退。こんなことでは、甲子園は程遠い。「もう一度チームの一体感をつくろう」と冬の強化練習に打ち込んだ。「あの冬を必死にやり切ったことが、今につながっています」と胸を張る。

 チーム一丸の姿勢は、主将としての振る舞いにも表れていた。試合後、ウイニングボールを手渡されたが、「今日の主役はサヨナラ打を打ったあいつ」と、1年生の庄子トーマス外野手に譲った。

 母は生前、佐藤が三振したり、投手として失点したりすると、「何してんだ!」と容赦なかったという。「今年の夏は、静かに見ていてほしいなと思います」。どこか照れくさそうに、そしてやはり寂しそうに笑った。

【実際の様子】右腕が決して忘れない尊敬する“母親”…帽子の裏に刻んだ“メッセージ”

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