「仲間として受け入れられた」 明かした“現実的な課題”も…仙台育英初の女子部員誕生の裏側

仙台育英の学生コーチ兼マネジャー・星よつはさん【写真:加治屋友輝】
仙台育英の学生コーチ兼マネジャー・星よつはさん【写真:加治屋友輝】

父の肩書ではなく、自らつかんだ入部

 選手と同じユニホームを着用し、努力で掴んだベンチ入りだった。第108回全国高校野球選手権大会は5日、阪神甲子園球場で開幕した。開幕戦では、仙台育英(宮城)が札幌日大(南北海道)を3-1で下し、4年ぶりの全国制覇へ好スタートを切った。仙台育英の学生コーチ兼マネジャーを務める星よつはさん(3年)が、記録員として初めて甲子園の舞台に立った。

 星さんの父親は、巨人、西武でプレーし、現在は東北学院大の監督を務める星孝典氏。同校初の女子野球部員として入部するにあたり、須江航監督から示された3つの条件があった。

「男子部員に負けないノックを打てること。データ分析のアナライズとしてエクセルなどのパソコン操作を身につけること。初めての女性生徒で、何か歪みや嫉妬とかがあるなかでも、3年間絶対ブレないでやれるという覚悟を持つこと」

 星さんは中学時代に準備を重ね、その条件を満たして入部を認められた。

 須江監督は、父が同校OBで元プロ野球選手という背景ではなく、星さん自身が努力して入部への道を切り開いたことを強調する。試合では指揮官の隣に座り、相手打者の傾向などを伝える役割も担う。「素晴らしい感性、気遣いもできるし、想いがある。僕らの視野が狭くなった時に、いろんなものを提供してくれる。かなりの戦力です」と厚い信頼を寄せている。

仙台育英・須江航監督(左)と星さん【写真:加治屋友輝】
仙台育英・須江航監督(左)と星さん【写真:加治屋友輝】

着替えの配慮も…歩み寄って築いた3年間

 星さんは、小学6年時にキャプテンを務め、支える側の存在を意識するようになったという。早朝から活動を支える保護者や、スポーツドリンクを準備してくれる家族の姿を見て、自分も裏方として野球に関わりたいと考えるようになった。

 女子部員として過ごした3年間は、決して簡単なことばかりではなかった。「いくつか壁があって、着替えだったりとか」と笑いながら、男子部員と活動する中で生じた現実的な課題を明かした。

 考え方の違いに戸惑うこともあった。女子部員が初めてだったチーム側にも、どう接するべきか手探りの部分があった。それでも、星さんは「みんながお互いに歩み寄って理解してくれたおかげで、ぶつかり合いながらも理解し合って、ここまで来れた」と振り返る。

 部員たちとは冗談を言い合い、時にはいじられることもあった。「良い意味で性別を感じないというか。男だからダメ、女だからダメみたいなこともないのが、青春の高校生活の野球だと思う」。女子部員として特別扱いされるのではなく、「一人の仲間として受け入れられたことが何よりうれしかった」と笑顔で語った。

 星さんの存在は選手からの信頼も厚い。部員の一人は「しっかりサポートしてくれている。目に見えないところをやってくれているマネージャーです。テキパキ対応して、いろいろ見てくれる。本当に裏方のことをしっかりやってくれています」と感謝を口にする。グラウンドでプレーする選手たちにとっても、星さんは欠かせない”仲間”の一人だった。

父・孝典氏に「親孝行できたのかなと思います」

 須江監督をはじめ、周囲が受け入れてくれたことへの感謝も大きい。仙台育英には「一期一会、誰かのために」というスローガンがある。星さんも「私を支えてくれる誰かのために、という気持ちが、自分が頑張っている理由になっています」と、その言葉を胸に日々の役割と向き合ってきた。

 初めてベンチ入りした甲子園では、試合前こそ緊張したものの、プレーボールがかかると地方大会以上に落ち着いて試合に臨めたという。開幕戦、さらにナイターという特別な舞台で仲間と戦い、「勝っても負けても、この仲間とできる試合は最後になる。少しでもみんなと一緒に戦って、その時間を過ごしたいと思った」と語った。

 父・孝典氏には「親孝行できたのかなと思います。『お待たせ』って言いたいです」と笑顔を見せた星さん。日焼けした顔で「日焼け止めは塗ってますが、意味ないですね」と笑えるのも、毎日グラウンドで仲間と同じ時間を過ごしてきた証しだ。

「女子部員として、他の女子マネジャーの希望になれるような存在になれたら」。お互いを尊重し、ぶつかり合い、理解し合った3年間。「男だから、女だから」ではなく、一人の仲間として迎えた甲子園で、星さんは仲間と過ごせる最後の夏をかみしめている。

(横井洸太 / Kota Yokoi)

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