佐野日大エース支えた推しの存在 堂々の完封…憧れアイドルが「ニュースみていただけたら」

聖隷クリストファー戦に登板した佐野日大・鈴木有【写真:加治屋友輝】
聖隷クリストファー戦に登板した佐野日大・鈴木有【写真:加治屋友輝】

乃木坂46の「図書室の君へ」を最後に聴くのが試合前のルーティン

 第108回全国高校野球選手権大会は6日、甲子園球場で第2日が行われ、1回戦で佐野日大(栃木)が聖隷クリストファー(静岡)を1-0で下した。エース・鈴木有投手(3年)は、大会屈指の好投手として注目を集めた高部陸投手(3年)との投手戦を制した。9回102球、6安打7奪三振、無四死球の好投で、同校25年ぶりの夏の甲子園白星をもたらした。

 クレバーな投球で最後まで本塁を踏ませなかった。直球は140キロに満たないものの、スライダー、カーブ、カットボールを低めに集めて凡打の山を築いた。投げ合った高部については「いいピッチャーというのは分かっていました。相手に先制点を譲らない気持ちで投げました」と振り返る。

 マウンドでは一切表情を変えないが、ゲームセットの瞬間は感情があふれた。「みんなで校歌を歌うことが目標だったので、達成できてうれしかった」。静かなエースが見せた喜びは、仲間とつかんだ25年ぶりの夏の1勝の大きさを物語っていた。

 大舞台を前にしても、鈴木には欠かさないルーティンがある。球場へ向かうバスの中で、乃木坂46の「図書室の君へ」を聴くことだ。「球場に近づくにつれて最後に聴く」と決めており、気持ちを整えてからマウンドへ向かう。その1曲が、いつもの自分をつくってくれる。

 推しメンバーは、同じ栃木県出身の賀喜遥香さん。TikTokで見かけたことをきっかけにファンになり、部屋にグッズを飾るほど夢中だ。引退後にまずやりたいことは、東京での“聖地巡礼”。グループ名の由来となった乃木坂など憧れの場所を巡る日を楽しみにしているという。「認知してくれるだけでもありがたいので、ニュースを見ていただけたらうれしいです」と照れ笑いを浮かべた。

佐野日大の“先輩”でもある父と恩師への感謝

 心の支えは、乃木坂46だけではない。父・一平さんは1997年夏、佐野日大の遊撃手として8強入りを経験した。幼い頃から甲子園の思い出を聞いて育ち、「お父さんが立った甲子園で、自分も校歌を歌うことができて非常にうれしいです」と感謝を口にした。

 もう1人の恩人が、麦倉洋一監督だ。1989年夏、同校初の甲子園で勝利投手となった大先輩でもある恩師の指導で、武器である制球力を磨き上げてきた。「コントロールで勝負ができるようになったのは監督さんのおかげです」。コースの投げ分けや変化球を徹底的に教わり、その積み重ねが102球の完封につながった。

 成長したエースの好投を、麦倉監督も「高部君の投球を見て力に変えてくれた」とたたえた。試合前は乃木坂46の1曲で心を整え、マウンドでは父や恩師への感謝を力に変える。好投手との投げ合いを制した102球には、高校生らしい素顔と、多くの人への思いが詰まっていた。

(横井洸太 / Kota Yokoi)

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