馬淵監督が語る「残り2年」 唯一の1年生スタメンの思い…見届けた“故郷”の劇的勝利

1年生唯一のスタメン・新名勇臣、3打数無安打
故郷の代表校に悔しい敗戦だ。第108回全国高校野球選手権は大会第6日の10日、甲子園球場で1、2回戦の計4試合が行われ、第1試合は2年ぶり出場の明徳義塾(高知)が日南学園(宮崎)と対戦。初回に1点を先制したものの追加点が奪えず、9回にサヨナラ打を浴びて初戦で姿を消した。1年生ながら「7番・指名打者」でスタメン出場した宮崎出身の新名勇臣外野手は無安打。打線を勢いづけられず、試合後は涙を流して悔しがった。
「甲子園はテレビで見ていた通り、1球1球に観客の声が凄くて、自分の中では楽しめた部分がありました。でも自分がチャンスで一本打てなくて、最後はサヨナラ負け。母や親戚、地元の方が喜んでくれて、この試合を応援してくれていたので、宮崎出身としてはうれしいんですけど、個人としては悔しい形になりました」
部員88人の名門校で入学直後からベンチ入り。1年生で唯一スタメンに名を連ねた背番号11は2回無死一塁、甲子園初打席で送りバントを決めた。だが4回は一ゴロ。5回2死満塁の絶好機では捉えた打球が野手の正面を突き、二ゴロに終わって追加点を奪えなかった。8回は左飛で3打数無安打。7回に追いつかれた明徳義塾はサヨナラ負け。宮崎県勢の令和初勝利を、複雑な表情で見つめた。
宮崎生まれの新名は小2で野球を始めると、中学時代は宮崎県南ボーイズで投手兼外野手としてプレー。「日南学園さんとか、宮崎の高校で甲子園を目指していく考えもありました」と当時を振り返る。中3時に明徳義塾から誘いの声がかかり「ビックリしました」という一方、「時間がたつにつれて明徳義塾で野球がしたいという思いが強くなりました」という。
「馬淵(史郎)監督の指導を受けて、全国制覇を目指していけると思いました。この高校3年間で、馬淵監督と明徳義塾だったら野球はもちろん、人間としても成長できると思ったので選ばせていただきました」
運命のいたずらか、初めての甲子園で対戦相手は日南学園。鬼塚海月捕手(2年)は中学時代にバッテリーを組んだ間柄で、対戦が決まった際は「まさかという思いがあった」という。事前に連絡を取り合ったそうで、打席に入ると「おう勇臣、来たか! 打ってみ!」と声をかけられ「緊張がほどけました」と“先輩”に感謝した。
馬淵監督が期待「今の1年生は有望」
結果は残せなかったが、名門校で1年生から起用されて自覚も強くなっている。「ベンチに入れなかった3年生、2年生を含めて代表して入らせてもらっている。しっかり責任を持ってプレーすることを意識しています」。入学して半年が経過し「野球だけじゃなく、人間性の部分では少しずつですけど成長できている。野球以外の部分も成長できているので、ここに来て良かったなと思います」と前を向く。
歴代4位の甲子園通算55勝を誇る70歳の馬淵監督は、今後について「長くやる気はないけど、あと2年はやるよ。体は大丈夫だし気力もある」と続投宣言。「今の1年生は有望なんですよ。いい選手が多い。今の1年生が3年生になったら全国制覇を狙いたい」と闘志に衰えはない。
新名を含む1年生部員31人には大きな期待が寄せられている。新名にはあと4回、甲子園出場のチャンスが残っている。「守りからリズムを作るタイプ」と慣れない指名打者も、味方の守備中にはベンチ裏で素振りを繰り返すなど、必死に調整してきた。新チームでは外野手として守備に就くことも考えられる。今は投球練習をしていないが、貴重な左腕としてマウンドに上がる可能性もある。
「来年また戻ってきたい。甲子園という舞台で借りを返したいです。あと4回、全部出たい気持ちもありますけど、先ばかり見ていたら足元をすくわれる。頭は冷静に1戦1戦、頑張っていこうと思います」。故郷・宮崎の代表校に喫した苦い敗戦を成長の糧にする。今夏の甲子園は、名将の元で日本一を目指す物語の、ほんのプロローグだ。
(尾辻剛 / Go Otsuji)