12歳で神宮に特大弾→付いた“異名” 苦しんだ注目度…小久保颯弥が目指す大砲ではない未来図

仙台育英の小久保颯弥【写真:加治屋友輝】
仙台育英の小久保颯弥【写真:加治屋友輝】

中日Jr.時代、神宮球場の左翼席へ特大アーチを放った

 第108回全国高校野球選手権大会の第8日は12日、甲子園球場で2回戦が行われ、第2試合で4年ぶりの全国制覇を狙う仙台育英(宮城)が花咲徳栄(埼玉)に1-0で勝利。かつて“スーパー小学生”として注目された小久保颯弥外野手(2年)は「1番・DH」で先発出場。しかし、この日は3打数2三振と苦しみ、7回の好機には代打を出されゲームから退いた。

 仙台育英は今夏も強力打線が自慢だ。この試合では、花咲徳栄のエース・黒川凌大投手(3年)に対し1得点と苦戦したものの、宮城大会ではチーム打率.415、5試合で59得点を記録。また、“日本一激しいチーム内競争”を掲げた結果、下級生が多くの出場機会を得ている。

 この日の先発メンバーのうち3年生は、4番・田山纏外野手と主将の倉田葵生外野手、今野琉成捕手の3人。小久保に加えて、完封勝利を収めた古川諒弥投手、二遊間を守る有本豪琉、砂涼人の両内野手は2年生。3番に座った丹羽裕聖内野手は1年生だ。

「小久保颯弥」と聞くと、野球ファンの脳裏にはあの“特大弾”が浮かぶのではないだろうか。中日ジュニアの一員としてNPBジュニアトーナメントを戦った2021年。小学6年生だった小久保が、神宮の左翼席中段に飛び込む本塁打を放ち、一躍“スーパー小学生”として脚光を浴びたのだった。

 衝撃の一発から5年、愛知名港ボーイズを経て仙台育英に進学すると、努力を重ねて名門の1番打者の座を掴み取った。そこに至るまでには世間のイメージと、自らの目指す理想像とのギャップに悩んだ日々があった。

独り歩きしてしまった“スラッガー”のイメージ

「あのホームランはまぐれだと思っていましたけど……。やっぱり少し調子に乗ってしまった部分はありました」。世間からの注目が高まり、天狗になってしまったと反省した。

 しかし、いつまでも“余韻”に浸っていたわけでもない。「ボーイズの監督さんが上手くサポートしてくれて、練習に打ち込むことができました」と、中学時代には、野球へ取り組む姿勢を見つめ直した。

 神宮のスタンドへ放り込むパワー、長打が魅力のスラッガーというイメージばかりが先行してしまったことには、少なからず戸惑いを感じたという。

 小久保本人は自らの長所を「足です。塁に出たら初球からでも積極的に二盗、三盗できるところです」と即答する。50メートル6秒00というスピードを武器に、宮城大会ではチームトップの7盗塁を記録した。

 理想の選手像を問うと「ヒットの延長線上に長打があるのが自分の中で理想で、塁に出たら足で圧をかけられるような選手になりたいです」とキッパリ。小久保の目指すところはスラッガーではなかった。

 報道陣からの様々な質問にも的確に、明朗に受け答えする小久保だったが、「シャイです。超が付くほどの人見知り」と、意外な素顔を父・広宣さんが明かした。その一方で、「言葉遣いだったり、生活面だったり。少しずつですけど、大人になっているなと感じます」。親元を離れ、寮生活を送る息子の成長も感じている。

 2回戦では途中交代を告げられる悔しい結果になったが、試合後には落ち込む様子を見せなかった。冷静に自己分析を行い、次戦を見据えていた。5年前とは違う形で、名を馳せる日も遠くないかもしれない。

(井上怜音/ Reo Inoue)

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