有明快進撃の裏に“もう一つ”のミラクル 部員4人のブラバン…約40人の編成を実現できたワケ

甲子園に駆け付けた有明の応援団【写真:荒川祐史】
甲子園に駆け付けた有明の応援団【写真:荒川祐史】

高校生から60代まで年齢層もバラエティ豊か「心は1つ」

 第108回全国高校野球選手権大会は16日、甲子園球場で3回戦4試合が行われ、春夏を通じ甲子園初出場の有明(熊本)が4-1で東日大昌平(福島)に勝利。劇的な3試合連続逆転勝ちで、ベスト8進出を決めた。7月に起きた熊本地震の被災者に元気をもたらすミラクル快進撃。応援席でも、ブラスバンドが奇跡的な編成で演奏を繰り広げた。

 7回終了時点で0-1とリードされていた有明。8回1死走者なしから、50メートル5秒8の快足を誇る1番・永田晴輝内野手(3年)がバント安打で出塁したのを皮切りに、ダブルスチールなどで2死満塁にチャンスを広げ、代打・広沢遼太朗選手(3年)が左前へ値千金の逆転2点適時打。アルプス席もお祭り騒ぎとなった。

 春夏を通じて甲子園初出場の有明には、応援団もチアガールも存在しない。吹奏楽部の部員もわずか4人(全員女子)で、これでは応援曲の演奏は成り立たない。顧問の石川優子さんが「以前は熊本大会のスタンドでも演奏していましたが、去年と今年は部員が少なくて、できませんでした」と嘆く状況だった。

 ところが、野球部の甲子園出場決定後、吹奏楽部のOB、OG、現役のバスケットボール部、バレーボール部、テニス部、“帰宅部”などの部員、さらには学校所在地の熊本県荒尾市の「荒尾市民楽団」に所属する一般市民らが協力を買って出て、急ごしらえながら総勢約40人のブラスバンドが出来上がった。年齢層も高校生から60代までバラエティに富んでいる。

 仕事と掛け持ちの人もいるため、甲子園での3試合は、メンバーの入れ替えも増減もあった。全体練習は1回戦と2回戦の前に計2度行っただけ。それでも、荒尾市在住の心理カウンセラーでクラリネット奏者として参加している深浦淳美さんは「即席ではありますが、心は1つになれていると思います。私自身、高校時代にかなわなかった、甲子園のスタンドで演奏する夢がかないました」と感慨深げに話してくれた。

小太鼓担当はバスケ部員「自宅でも指でリズムを刻む練習をしてきた」

 深浦さんは「震災の被災地の方々も、この快進撃を喜んでくださっていると思いますし、逆転勝ちばかりですから、野球部員の、最後まで諦めない気持ちに刺激を受けていると思います」と続けた。

 バスケットボール部の荒木竜翔さん(3年)は、県大会で敗退し、部活動を引退した直後、吹奏楽部員に頼まれて参加を決めた。「僕は野球を観るのも好きなので、うれしいです」と満面に笑みを浮かべる。初心者ながらスネアドラム(小太鼓)を担当。「自宅でもスマホで曲を流しながら、指でリズムを刻む練習をしてきた」そうで、真剣そのものだ。

 吹奏楽部の部長・松丸優來奈さん(3年)は、野球部が甲子園出場を決めた熊本大会決勝を自宅でテレビ観戦していた。「野球部の壮行会の際、私たちから(ブラバン参加の)呼びかけをさせてもらい、そこで応じてくれた生徒もいます」と振り返る。「野球部が強いのは知っていましたが、吹奏楽部は部員が少ないですし、まさか甲子園で演奏できるなんて、1ミリも思っていませんでした。これほどたくさんの方々に協力していただけるなんて……感謝しかありません」と感激の面持ちだ。

 ベスト8進出の原動力となった永田は「自分たちだけの力ではありません。アルプス席のみんな、熊本県民の皆さんをはじめ、球場全体が自分たちの味方をしてくれていると感じます」と頭を下げる。

 有明は18日、準々決勝の第4試合で、2024年選抜大会優勝の実績を持つ健大高崎(群馬)と対戦する。急造ブラスバンドとともに、決して勝利を諦めない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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