“有明旋風”の中心…甲子園で無念の骨折 ライバルにかけた言葉、紡がれた友情の真実

工(たくみ)修哉が先発、斉藤遼汰郎がリリーフの“左腕2枚看板”
第108回全国高校野球選手権大会は18日、甲子園球場で準々決勝4試合が行われた。第4試合では春夏を通じて初の甲子園出場ながら、3試合連続逆転勝ちでベスト8入りを果たし“旋風”を巻き起こしていた有明(熊本)が、2024年選抜優勝の健大高崎(群馬)と互角の投手戦を演じたが、両校無得点のまま迎えた延長10回に1点を奪われ、サヨナラ負けを喫した。“左腕2枚看板”の1人・工(たくみ)修哉投手(3年)が利き手の甲を骨折し、登板できなかったことが痛恨だった。
工の成長は、有明の甲子園初出場の要因の1つだった。
昨夏も熊本大会の決勝まで勝ち残り、甲子園まであと一歩に迫った有明だが、工と同学年のエース・斉藤遼汰郎投手がほぼ1人で投げ抜き、工自身は体調不良もあって、ほんの数イニングしか投げられなかった。
しかし今夏は違った。工が先発し、斉藤がリリーフするパターンで熊本大会5試合を勝ち抜き、ついに甲子園の土を踏んだ。工は熊本大会で計22イニングを任され、斉藤の同21イニングを上回ったほどだ。
甲子園でも先発・工、リリーフ・斉藤で2連勝を飾った。ところが、東日大昌平(福島)との3回戦の試合前練習中、先発するはずだった工が利き手を負傷し緊急登板回避。代わりに先発した斉藤が9回1失点完投勝利を挙げたのは幸いだったが、工は病院で「骨折」の診断を受け、戦列復帰が絶望的となった。
こうして迎えた健大高崎との準々決勝。再び先発マウンドに上がった斉藤が、健大高崎の前に仁王立ちした。9回まで6安打3四死球を許しながら、無失点に封じたのだ。一方、左手に包帯を巻いた痛々しい姿の工は9回、1死一、二塁と2死満塁の2度のピンチに、伝令としてベンチからマウンドに駆け寄り、バッテリーと内野陣を励ました。

「笑顔で行こう」と声をかけた工、アイコンタクトで返した斉藤
工は2度とも「甲子園でプレーしている以上、楽しんで笑顔で行こう」と声をかけた。斉藤はアイコンタクトを返したという。斉藤は2死満塁で右打者の内角いっぱいにストレートを決め、見逃し三振で窮地を脱した。
結局有明は、無死一、二塁の状況で始まった延長10回タイブレークで、相手に犠打と内野安打でついに1点を奪われ、サヨナラ負けを喫した。この時、本塁へ頭から滑り込んだ三塁走者と西山亨太郎捕手(3年)のタッチのタイミングが微妙で、工は高見一茂監督の伝令として球審にビデオ検証を求める役割も担ったが、判定は変わらなかった。
怪我で3回戦と準々決勝に登板できなかったことは残念に違いないが、工には「去年は1人で投げた斉藤を、今年はサポートして甲子園へ導くことができて、よかったと思います」という満足感もある。「斉藤はライバルでもあり、目標でもありました。斉藤がいたから自分もここまで成長できたと思います」と感謝を口にした。
一方の斉藤も「今は悔しいですが、初出場でここまで来られたことは楽しかったです」と清々しい表情を浮かべ、「工はいいライバルであり、仲間です」と表現した。
この左腕2人の切磋琢磨こそ、“有明旋風”の原動力だったのかもしれない。