3試合完投425球も…「当たり前」 投手転向から2年、ベスト4進出エースに漂う“大物の予感”

準決勝に先発した天理・長尾亮太【写真:加治屋友輝】
準決勝に先発した天理・長尾亮太【写真:加治屋友輝】

「打撃投手をやらせてみたら球持ちがよく、野手の投げ方に見えなかった」

 伸びしろは途轍もなく大きそうだ。第108回全国高校野球選手権大会は20日、甲子園球場で準決勝2試合が行われ、第2試合で天理(奈良)が0-1で健大高崎(群馬)に惜敗。優勝した1990年以来36年ぶりの決勝進出に届かなかった。しかし、1年生の秋に捕手から投手に転向したエース右腕・長尾亮大投手(3年)は8回136球1失点の力投。底知れない潜在能力をうかがわせながら“聖地”を去った。

 驚異的なタフネスだ。長尾は初回、いきなり1死一、二塁とされ、相手の4番・佐藤麻恩投手(3年)に右前適時打を浴びて先制の1点を奪われた。しかし、その後が粘り強かった。2回以降も3者凡退に仕留めた3回以外は、全イニング得点圏に走者を背負いながら、鬼気迫る表情で腕を振り、追加点を許さない。結局、味方打線の援護がなく敗退したが、「やり切ったという部分では100点満点。後悔はないです」と言い切った。

 くしくも、この日が61歳の誕生日だった藤原忠理監督は「やはりエースですね。もともと尻上がりに良くなるのが長尾の特長。得意のスライダーに相手打線のタイミングが合ってきて、ここが代え時かなと思ったことが何度かありましたが、彼の顔つきが非常にしっかりしていたので、私も『任せた』と腹を括りました」と感慨深げに振り返った。

 背番号「1」を背負う長尾は今大会、チーム4試合中3試合で先発を任され全て完投。三重との準々決勝だけは背番号「10」の橋本桜佑(3年)が先発し完封したが、長尾の投球数は合計425球(1試合平均約141.7球)に上った。甲子園は26回6失点で防御率2.08の好成績をマークした。

 捕手として入学したが、藤原監督の勧めで投手に転向したのは1年生の秋。指揮官は「打撃投手をやらせてみたら、非常に球持ちが良く、野手の投げ方には見えませんでした。私の長年の勘で、ああいう球持ちであれば、教えたら素晴らしい変化球を投げるようになると思いました」と振り返る。

天理大監督としてリーグ優勝11回の実績「可能性広げることが大事」

 2024年1月に就任した藤原監督はまだ3年目だが、それ以前に天理大の監督を長年務め、阪神大学リーグ優勝11回の実績を持っている。「大学から投手を始めた選手もいました。指導法もあります。適性を見極めて、まずはやらせてみる。無理だったら戻ればいいので、可能性を広げることが大事だと思っています」と説く。

 長尾はめきめき上達し、早くも翌春の選抜大会でベンチ入り。昨夏の甲子園でチームは鳴門(徳島)に初戦敗退したが、3番手で6回途中から登板した長尾は、2回2/3を無失点に抑え“爪痕”を残した。

 今春以降の成長ぶりは、さらにハイペースだった。藤原監督は「長尾はめきめき体力をつけました。努力の賜物です。目立たないところで他人の1000倍努力しているところを、私は見ていました。ですから私としては、長尾は3試合よく頑張ったというより、彼の体力からすれば当たり前。絶対やってくれると思っていました」と称賛を惜しまない。

 具体的には、150球のピッチング練習を終えた後も、15メートルほどの距離でネットに向かって延々とボールを投げ、フォームをチェックする姿を何度も見たという。「グラウンドに1人だけ残ってランニングしている姿も見ました。やり過ぎて5月頃に少し膝を痛め、こちらがストップをかけたほどです」と明かす。

 長尾本人は「投手としては、全て監督さんにつくり上げてもらったと言っても過言ではない。感謝してもしきれません」と最敬礼。「ここで終わってしまうと、この舞台を経験した意味がないので、さらなるステップを目指して頑張っていきたいです」とも。大学進学志望だが、「将来的にはプロ野球に行きたい。最終的には球界を代表するような投手になれたらと思います」と上のステージでの活躍を期す。

 藤原監督も「狙ったところに投げられるコントロールが彼の持ち味ですが、次は経験を積み、打者を観察しながら投げられるようになってほしい。投手を始めてから、まだ2年ですから、これからです」と伸びしろに太鼓判を押す。

 181センチ、84キロの体に秘められた長尾の能力が本当に発揮されるのは、まだまだ先の話なのかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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