選抜逃しどん底…智弁和歌山4番を救ったLINE ドラ1候補の“兄弟子”が伝えた思い

智弁和歌山の4番捕手・山田凛虎、準決勝では織田翔希から同点二塁打
5年ぶり4回目の夏の甲子園優勝に王手をかけている智弁和歌山の“後ろ”には、今秋ドラフト1位候補の大学生も付いている。第108回全国高野球選手権大会の決勝は、22日午前10時から甲子園球場で智弁和歌山と健大高崎(群馬)が対戦。前日の21日、智弁和歌山の選手たちは兵庫県西宮市内で軽い調整を行った。
智弁和歌山のキーマンの1人は、守備の要であり、4番も打つ山田凛虎(りとら)捕手(3年)だ。バラエティに富んだ投手陣を巧みにリードする。打っては今夏の和歌山県大会でチームトップの打率.533(15打数8安打)をマーク。甲子園では当初、打撃が振るわなかったが、横浜(神奈川)との準決勝では、1点を追う3回に最速157キロ右腕・織田翔希投手(3年)のストレートをとらえ、鮮やかに三塁線を破る同点二塁打を放った。逆転劇の口火を切り、「少し当たりが出たので、決勝でもチームのために打ちたい」とボルテージを上げている。
山田は愛知県出身で、小6の時に中日ドラゴンズジュニアに選出された。2020年12月のNPB12球団ジュニアトーナメントでは準優勝したが、この時のチームメートに、横浜(神奈川)の主力となっている小野舜友内野手(3年)と江坂佳史外野手(3年)がいた。3人は中学進学と同時に、そろって硬式の東海中央ボーイズに入団。中3の時にはボーイズリーグの春季全国大会で優勝を飾った。
小野と江坂は横浜に進学するも、山田が選択したのは智弁和歌山だった。「自分が捕手として一番成長できるのはどこかと考えた時に、智弁和歌山の中谷(仁)監督の下でやるのが一番かなと思いました」と理由は明快だった。
中谷監督は、智弁和歌山3年当時の1997年に、主将&捕手として夏の甲子園で全国制覇に貢献。その年のドラフト会議で阪神から1位指名を受け、楽天、巨人でも捕手として活躍した。その指導力を見込んで、和歌山で高校生活を送ることを決めたのだった。

昨秋県大会準々決勝敗退で弱音「うまくいかないです」
「智弁和歌山に来て、よかったと思っています。中谷監督の下で捕手としても、人間性の面でも育てていただきました。技術面では送球や打撃もそうですが、やはり一番は配球の面で成長できたと思います。自分が捕手としてふがいないと感じた時には、同じキャッチャーとして監督に相談させていただきました」と山田は感慨深げに振り返る。
さらに、山田にはもう1人、頼もしい“アドバイザー”がいる。5年前の2021年の夏、中谷監督の下で2年生ながら強打の捕手として智弁和歌山を全国制覇に導き、卒業後は青学大に進学。いまや今秋ドラフト1位候補として、プロから熱い視線を浴びている渡部海(わたべ・かい)捕手である。
「以前から困ったときに電話をさせてもらっていました」と山田。昨秋、新チーム結成後最初の大会である秋季和歌山県大会の準々決勝で敗退し、早々と選抜出場の可能性が消えると、思わず「うまくいかないです」と少し弱音を吐いた。渡部からは「おまえが主力として引っ張っていくチームやから、弱いところを見せずに引っ張っていけ」と激励されたという。
「この夏、和歌山県大会が始まった頃からは、毎試合チェックしてくださっているみたいで、試合前と試合後にLINEのメッセージをいただいています」と明かす。いわば中谷門下の“兄弟子”にあたる渡部の存在は、山田にとってこの上なくうれしく、頼もしい。
「3年間積み上げてきたものがあり、この夏の甲子園ではバッテリーで成長したところを見せられていると思います」と充実感を漂わせる山田。“師匠”と“兄弟子”への思いを胸に、「日本一という結果で恩返ししたいです」と力を込めた。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)