9回制だから生まれた甲子園決勝の“ドラマ” 7回制導入の機運も…看過できない酷暑問題と空気感

現場の指導者から反対の声上がるも…国際大会は7回制の流れ
第108回全国高校野球選手権大会は22日、甲子園球場で決勝が行われ、智弁和歌山が4-3で健大高崎(群馬)に競り勝ち、5年ぶり4度目の優勝を飾った。高校野球の7イニング制採用をめぐり賛否両論が激しく交わされている中、皮肉にも決勝戦は8回に大きく動いた。
決勝は、1-2とリードされていた健大高崎が8回、1死二塁で主将の石田雄星外野手(3年)が右翼席へ起死回生の2ランを放って逆転。しかし、智弁和歌山もその裏、1死二、三塁のチャンスをつくると、川原一将内野手(3年)がスクイズを決め同点に追いついた。さらに、続く山下晃平外野手(3年)が空振り三振した球が暴投となり、決勝点が転がり込んだのだった。
一進一退の攻防に、満員札止めの観客4万4700人が詰めかけたスタンドは、何度もどよめき、沸き返った。仮に7回制であれば、智弁和歌山がすんなり2-1で勝利を収め、8回の“ドラマ”はなかったことになる。
日本高野連の井本亘事務局長は「この全国大会をご覧になった方がどう思われたかも大切ですが、一方で、7月の都道府県大会の暑さはもっと過酷なこともあります」と指摘。「今大会の結果も踏まえて、議論を重ねていきたいと思います」と慎重な姿勢を示した。
7イニング制は、深刻化する夏の猛暑対策として議論されるようになり、選手、観客、応援生徒の健康リスクを軽減するため、早急な導入を求める声もある。日本高野連が設けた検討会議は、2028年春の選抜大会をめどに、全ての公式戦で7イニング制を導入することが望ましいとする報告書をまとめた。
ただ、野球の根幹ともいえる9イニング制のルールを変えることには反発も大きく、現場の指導者からも反対の声が上がっている。一方で「WBSC U-18野球ワールドカップ」、「BFA U18アジア野球選手権」など、高校生世代の侍ジャパンU-18代表が出場する多くの国際試合で、7回制が採用されている実態もある。

クーリングタイム、2部制、DH制…激変する高校野球
また、今大会は新たにビデオ検証が導入された。検証を求める権利は9イニングで1回。検証で判定が変わった場合は、その後もう1度だけ検証を求めることができる。2回続けて判定が変わったとしても、3回目は要求できないルールだ。
高野連によると、今大会中に17件のビデオ検証が行われ、判定が覆ったのは6件。判定通りとなった11件のうち、2件は確証なし(明白な映像がなかったため、当初の判定通り)。残る9件は確証ありだった。
井本事務局長は「導入の目的は、より正しい判定を選手、チームにお返しすることにありました。観客のみなさんに、より納得してもらう意味でも、一定の成果はあったと感じています」とうなずいた。
大会15日間の観客動員は合計80万2100人で、昨年より7万7400人増加。井本事務局長は「決勝戦がエキサイティングな、手に汗握る展開となったこともあって、閉会式には外野席のお客さんが数多く残ってくださっていて、最後まで選手に拍手を送っていただいたことが、グラウンドレベルから見ていて凄く印象的でした」と述懐した。
主に酷暑対策としてクーリングタイム、試合開始時間を午前と午後に分ける“2部制”を導入し、今春からはDH(指名打者)制にも踏み切った高校野球の状況は、近年激変している。その中で、反対の声も大きい7回制の議論はどう決着するのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)