2年連続でドジャース加入…世界一直後の放出を経て、今感じること
ドジャースのベン・ロートベット捕手は、昨年トレードで加入し、キャッチャーに故障者が出る中で奮闘。ワールドシリーズ制覇に貢献し、同年のドジャースを語る上で欠かせない存在になった。しかし、直後に待っていたのは、“メジャーリーグの現実”だった。
ロートベットは昨年のトレード期限間近でレイズからトレード移籍。9月にはウィル・スミス、ダルトン・ラッシング両捕手が相次いで負傷したためメジャーに昇格した。山本由伸投手のノーノー間近の投球を導くなど、投手陣の好投を演出。打撃面では、同年レイズでは打率.095だったが、ドジャースでは打率.224と奮闘した。
プレーオフではスミスとともにロースターに入り、ワイルドカードシリーズと地区シリーズで計4試合に先発出場。打率.429(7打数3安打)の成績を残した。
しかし、歓喜の瞬間から2週間後にチームを離れることになる。来季に向けたチーム編成の中で、オプションのないロートベットは40人枠を外れるDFAに。レッズが獲得すると、2月にはまたDFA。直後にドジャースが再獲得したが、5日後にまたDFAとなった。
半年前までプレーオフの舞台で大歓声を浴びていた男が、今季の前半を過ごしたのはメッツ傘下の3Aという環境だった。
「正直、少しきつかったよ……」。ロートベットがこぼす。
「野球人生で最も熱気のある環境でプレーした後に、違う環境へ行くわけだからね。難しさはあったけれど、違った視点や昨年と異なる環境で野球をしたことで、野球の中での(これまで当たり前に思っていた)小さなことをありがたく感じたし、周囲の良い人たちに恵まれたのも助けになったね」
メッツ傘下3Aシラキュースでは48試合に出場。半年間の中では、ドジャースでの思い出に浸る場面もあった。前年のチャンピオンリングを、シラキュースまで配送してもらい、受け取った。メジャーにいればドジャース戦の際などに華々しく贈呈されるが、そんな立場ではなかった。
「前半戦の半ば頃だった。郵送してもらったんだけど、ちょっと危なかったかもね(笑)。とにかく早く手に入れたくて待ちきれなかったんだ。昔、他の人が持っているのは見たことがあったけど、自分自身の名前が入ったリングを持つのはかなり現実離れしていたよ」
メジャーでは地区最下位に沈むメッツの下部組織にいた男が、はたまたワールドシリーズ3連覇を目指す強豪ドジャースでスタメンマスクを被る。メジャーリーグの構造にもまれながら、激動の1年を過ごした。
「この仕組みは理解している。そしてここのロースターの競争がいかに激しいかは少しは分かっていたからね。チャンスが全くないよりは、ロースターに入ったり外れたりしながらでも戦える方がいい。他球団から獲得されるのも、評価されていると感じられる。枠の厳しさは分かっているから、とにかく残留して自分の価値を証明できるよう全力を尽くすだけさ」
今季地区首位を快走していたドジャースだったが、スミスとラッシングが相次いで負傷。奇しくもまたトレード期限間近で、ドジャースに戻ることになった。
「このタイミングで声をかけてもらえたこと。この機会をもらえて心から感謝している」
トレード市場に“強打の捕手”もいる中、ロートベットの昨年の経験が高く評価された。「間違いなくリラックスして臨めているよ。選手たちのことや、彼らがどういう投球を好むか、日頃どう準備しているかを知っているのだから」。
現在は、同じ1997年生まれのハンター・フェドゥーシア捕手と併用されている状況。スミスが復帰すればどちらか降格する可能性があり、いわば“ライバル関係”でもあるが、チームの勝利という目的は同じ。ロートベットはベンチスタートの日でも、ロッカーでスカウティングレポートを熱心に読み込み、スマホで動画を見ながらメモを取る場面を見かける。
「チームが自分に適していると思う役割なら何でもこなす。与えられた場所で自分の仕事をして、チームに価値を与えること。それが僕のプランだ」
正捕手スミスの復帰が近づいている。それでもやることは変わらない。ひたむきに、自分のプレーを続けるだけだ。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)