あふれる誹謗中傷も「次のマウンドに立つ」 ド軍ディアスがレジェンドから学んだ攻略法…結果に繋がる“心の整え方”

プレッシャーと戦いながら投げ続けるドジャースの守護神エドウィン・ディアス【写真:荒川祐史】プレッシャーと戦いながら投げ続けるドジャースの守護神エドウィン・ディアス【写真:荒川祐史】

避けては通れない「失敗後のバッシング」

 プロ野球やメジャーリーグの世界において、最も精神的負荷が大きいポジションの一つが「クローザー(抑え投手)」だ。勝っていれば「勝って当然」、1度でもセーブに失敗すれば敗戦の直接的な原因となり、一転して猛バッシングの矢面に立たされる。

 特に現代はSNSの普及に伴い、過激なファンからの厳しい言葉や心ない誹謗中傷がダイレクトに選手のスマートフォンへ届く時代となった。スマートフォンの画面を開けば、画面いっぱいに広がる批判の言葉――。過酷なプレッシャーの中で戦うリリーバーたちは、このデジタル時代の“負の側面”とどのように向き合い、自らのメンタルを保っているのだろうか。

 2025年12月に3年総額6900万ドル(約108億5000万円)でドジャース入り。メジャー屈指のプレッシャーと戦い続ける守護神エドウィン・ディアスが、過酷な批判やSNSとの付き合い方、そしてメジャーのレジェンドから受け継いだ「究極のメンタルコントロール術」について語った。

 どんなに優秀な守護神であっても、年間を通して完璧であり続けることは不可能に近い。時には打たれ、敗戦の不名誉を背負う日もある。

「SNS上で非常に厳しいコメントを受けたことはあるか」。直球質問に対して、ディアスは静かに、しかし力強くうなずいた。

「もちろん、自分にもそういう経験はあるよ。悪い投球をしてしまった後は、誰だって『なぜ、あんな投球をしてしまったのか』『何が悪かったのか』と自分自身で深く考えてしまうものだからね」

セーブに失敗すれば猛バッシングの矢面に立たされる【写真:アフロ】セーブに失敗すれば猛バッシングの矢面に立たされる【写真:アフロ】

 マウンド上での失敗だけでも精神的なダメージは大きい。そこに輪をかけて押し寄せるSNS上の批判の声。「辞めろ」。時には選手の家族へ批判の声が及ぶこともある。しかし、ディアスは自身の中で明確な「境界線」を引いているという。

「でもね、結局のところ大切なのは『周りの人間が何を言っているか』ではないんだ。自分自身がどう感じているか、それが全てなんだよ。だから僕の場合、悪い結果が出た時は、すぐにそれを『水に流す』ようにしている。そして、次の日にはしっかりと準備を整えて球場に戻るんだ」

 言葉で言うのは簡単だが、目の前のスマホに並ぶ批判を前に、それを「水に流す」のは容易ではない。32歳はどのようにしてその強靭なメンタルを手に入れたのだろうか。

レジェンドから授かった「切り替えの極意」

 ディアスが心の支えにしているのは、MLB史上最多となる通算652セーブを誇り、満場一致で殿堂入りを果たしたヤンキースのレジェンド、マリアノ・リベラからの言葉だ。

「僕にとって史上最高のクローザーは、間違いなくマリアノ・リベラだ」と語るディアスは、かつてリベラ本人から直接贈られたアドバイスを今でも鮮明に覚えているという。

「マリアノはある時、僕にこうアドバイスしてくれたんだ。『いいか、お前が昨日の夜に何をしたとしても、それはもう過去に起きてしまったことなんだ』とね」

 過去を変えることは誰にもできない。どれほど悔やんでも、昨日の結果が覆ることはないのだ。リベラはこう続けたという。

2013年に引退したMLB最多652セーブを誇るヤンキースのレジェンド、マリアノ・リベラ【写真:アフロ】2013年に引退したMLB最多652セーブを誇るヤンキースのレジェンド、マリアノ・リベラ【写真:アフロ】

「『だからこそ、次の日に向けて準備をしろ。素晴らしい投球ができた日も、最悪な投球をしてしまった日も関係ない。ただ次の日のために準備を整え、そのプロセス(野球人生という旅)を全力で楽しめ』――。そう言われたんだ」

 失敗した翌日も日は昇り、次の試合がやってくる。過去の失敗にとらわれて自分を見失うのではなく、今できる最善の準備をして「次のマウンド」に立つ。このレジェンドからの教えこそ、ディアスがSNSの雑音に惑わされず、誇り高くマウンドに立ち続けられる最大の秘訣なのだ。

ノイズを遮断する「ポジティブ限定」のSNS攻略法

 では、具体的にSNSというツールとどのように距離を取っているのか。ディアスのアプローチは至ってシンプルかつ徹底している。

「SNSを見るとき、僕は『ポジティブなもの』だけを受け取るようにしているんだ」

 ファンからの温かい声援や、ポジティブなメッセージには耳を傾け、力に変える。一方で、敗戦後に溢れかえる批判やネガティブな誹謗中傷に対しては、一切関わらないというスタンスを貫いている。

「誰かがポジティブな言葉をかけてくれたら、素直にそれを受け取る。でも、誰かが僕に対してネガティブな攻撃をしてきたら、その声には一切耳を貸さないし、見ないようにする。とにかく、常にポジティブな要素だけに集中するんだ」

 また、プロのアスリートとして「身体を休めること」もメンタルリセットの重要な要素だと明かす。「良い試合でも悪い試合でも、しっかり家に帰って休み、睡眠をとる。そして私にとっては、とにかくすぐに前日のことを忘れて切り替えることが何より大切なんだ」。

 良い投球ができた日は、その感覚を次の日に持ち越し、悪い登板だった日は全てを忘れて次の機会に改善する。この極めてシンプルな思考の反復こそが、過酷なメジャーの舞台で守護神として君臨し続けるための「SNS攻略法」であり「生存戦略」なのだ。

 マウンド上で100マイル(約161キロ)を超える直球を投げ込むディアス。通算260セーブを誇るクローザーの本当の強さは、その腕力だけでなく、レジェンドの教えを胸に雑音を一切遮断する、研ぎ澄まされた「心の整え方」にあるのかもしれない。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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