ド軍同僚が呆れたスクーバルの“KY発言”…「大したことない」の裏にある異常な実体験 信頼する由伸へ払う敬意

猛暑の中ドジャースを勝利に導いたタリク・スクーバル【写真:荒川祐史】猛暑の中ドジャースを勝利に導いたタリク・スクーバル【写真:荒川祐史】

猛暑警報発令も…好投もたらした「アドレナリンと捕手のリード」

 ドジャースのタリク・スクーバル投手が3日(日本時間4日)、本拠地で行われたブレーブスとの地区シリーズ第1戦に先発。6回を投げ2安打1失点、7奪三振2四球の快投を演じ、チームを勝利へ導いた。この日のロサンゼルスは「猛暑警報」が発令され、試合中の気温は39度を記録。グラウンドの体感温度は40度を軽く超える猛暑となった。多くの選手が汗を拭い、体力を削られる環境下で、サイ・ヤング賞に2度輝いた左腕はなぜ、これほど冷静に、そして力強く投げ切ることができたのか。

「捕手のウィル(・スミス)が本当に素晴らしいリードをしてくれた。序盤にうまくコントロールできなかった球種があったけれど、僕をうまくゾーンに引き戻し、見極められた球を修正しながら根気強く付き合ってくれたんだ」

 試合後、汗を拭いながら会見場に現れたスクーバルは、第一声で正捕手への感謝を口にした。

 立ち上がりから力強い直球を軸にブレーブス打線を押し込んだ。圧巻だったのは2回だ。2死走者なしの場面でギアを上げると、この日最速となる101.1マイル(約162.5キロ)のフォーシームを投げ込み、スタンドをどよめかせた。通常、投手は試合終盤にかけて球速を上げていくスタミナ配分を考慮することが多いが、スクーバルはこの過酷な環境下で序盤からアクセルを全開にした。

「外の気温に負けないよう、自分の熱量も合わせようとしただけさ(笑)。でも、真面目な話、ポストシーズンはレギュラーシーズンとは違うアドレナリンが出る。2ストライクを取って、ホームのファンが総立ちで応援してくれるのが目に入ると、自然と力が入るんだ。自分のベストの球を投げ込むことだけに集中していたよ」

 6回にマーフィーに中越えソロを浴び、2つの四球で一発逆転のピンチを迎えたが、崩れることはなかった。オルソンを99.7マイル(約160.5キロ)で押し込み、左飛に打ち取った。

「本塁打を打たれた球自体は、あのイニングで最も意図通りに投げられた球だった。四球で走者を出したのは反省点だけど、2-1のリードを守るために最少失点で食い止めることだけに集中した」。直後の6回にタッカーの2ラン、マンシーのソロを呼び込み、ポストシーズン通算3勝目をつかみ取った。

試合中の気温は39度を記録した【写真:荒川祐史】試合中の気温は39度を記録した【写真:荒川祐史】

「最も暑い試合だったか?」の問いに…記者爆笑の超絶エピソード

 スクーバルは暑さで疲労困憊しているのではないか――。報道陣は懸念を示していたが、当の本人の感覚はまったく異なっていた。後半の質疑応答で記者から「これまでに経験した中で最も暑い試合だったか?」と問われると、スクーバルはニヤリと笑い、報道陣を沸かせるエピソードを披露した。

「いやいや、僕がアリゾナで育った少年時代(リトルリーグ)、ハバス湖の近くで華氏127度(摂氏約52.8度)の中で投げたことがあるんだよ。それに比べたら、今日の暑さなんて大したことないさ!」

 会場が爆笑に包まれる中、スクーバルは冗談交じりに続けた。

「まあ、あの頃のキッズたちとはレベルが違うし、メジャーの試合としては間違いなくトップクラスに暑かったけどね(笑)。でも実は、マウンドに立っている間は暑さなんてまったく意識していなかった。ベンチに下がってから仲間に『今日ってそんなに暑かった?』って聞いたら、『当たり前だろ!』って呆れられたくらいなんだ」

 過酷な環境下でも集中力を一切切らさないメンタルコントロールの秘訣について、スクーバルは「1球に集中すること」の難しさと重要性を語る。

「『スライダーを甘く投げないようにしよう』とか『直球を中に浮かせないようにしよう』というネガティブな思考は、気を抜くと頭の中に侵入してくる。それを排除して、これまで何千回と練習してきた自分の投球を信じること。言葉にするのは簡単だけど、実践するのは一番難しい。でも、相手も同じ条件で戦っているんだから、言い訳にはならないよ」

過酷な環境下でも集中力を切らさないスクーバル【写真:荒川祐史】過酷な環境下でも集中力を切らさないスクーバル【写真:荒川祐史】

山本由伸には「最大の敬意を払っている」…3年連続世界一へ盤石の投手陣

 自身の仕事を完璧にこなしたエースは、すでに視線を次なる戦い、そしてチームメートへと向けている。第2戦で先発するブレイク・スネル、そして第3戦に控える山本由伸について話題が及ぶと、スクーバルは言葉に熱を込めた。

「彼(山本)の投手としての質や準備の姿勢には最大の敬意を払っている。チーム全員が彼に全幅の信頼を寄せており、次のマウンドでも素晴らしい投球をしてくれるはずだ。彼がこれまで野球界で成し遂げてきたこと、そして昨シーズンの圧巻のパフォーマンスには本当に感銘を受けている。彼らがマウンドに上がれば、チームの勝率は跳ね上がるからね」

 39度の酷暑をものともせず、2年連続サイ・ヤング賞左腕としての役割を完璧に果たした。試合後には「スタンドで声を張り上げてくれたファンには感謝しかない。みんな日焼け止めを塗って観戦してくれたことを願うよ」と気遣いも忘れなかった。

 悲願であるワールドシリーズ3連覇へ向け、最高のスタートを切った。タフなマウンドを支配した29歳の熱投は、世界一を目指すドジャースにこれ以上ない勇気をもたらしたはずだ。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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