「比べられるのは逆に光栄」阪神・西純矢の弟が明かす”変化” 今では兄に助言も…深まった”絆”

東大戦で2安打を放った法大・西凌矢【写真:加治屋友輝】
東大戦で2安打を放った法大・西凌矢【写真:加治屋友輝】

法大・西凌矢が今季初スタメンで2安打、苦しい日々を支えた兄の存在

 いつの日か兄と同じ舞台に立ちたい。その思いは、大学最後の秋も変わっていない。法大の西凌矢外野手(4年)は25日、神宮球場で行われた東京六大学野球秋季リーグ第7週の東大1回戦に「9番・右翼」で今季初の先発出場を果たし、2安打を放った。兄は阪神の西純矢外野手。今秋はプロ志望届を提出しなかったが、夢を諦めたわけではない。進路が決まっていない今も、兄の背中を追い続けている。

 3点リードの4回、先頭で左前打を放った。6回にも1死から左前へ運びスタメン起用に応えた。「みんなに繋いでいくという意識で臨んだので、いい結果になって良かったです」。春も、秋の前半も、ベンチに入れない日々を過ごしてきた。「苦しかった期間が長かったですけど、スタメンを掴むことができて良かったです」。ようやく巡ってきた機会で結果を残し、積み重ねてきた時間を振り返った。

 広陵高から進んだ法大ではCチームから始まった。同期がリーグ戦などで活躍する姿を見て、応援する気持ちと、自分への歯がゆさが入り交じった。自分に足りないものを考えながら取り組み続け、ようやく3年夏の終わりにAチームへ。亜大とのオープン戦で同点2ランを放ち、同年秋のベンチ入りにつなげた。

 苦しい時期に支えてくれたのが、プロ野球選手の兄、25歳の純矢だった。打撃の技術だけでなく、打席での気持ちの持ち方についても助言を受けた。相手投手に応じて逆方向を意識するなど、具体的なアドバイスもあったという。「励ましてくれたりもしていたので、とても支えられました」。聞きたいことがあればすぐに連絡し、電話で話すこともある。離れていても、頼れる存在だった。

 この日の朝も「ベンチに入ったから頑張るよ」と連絡した。返ってきたのは「最後まであきらめずに頑張れよ」という言葉。「多分、試合を見てくれたかなと思います」。兄の応援を受けて臨んだ一戦で結果を残した。

阪神・西純矢【写真:喜岡桜】
阪神・西純矢【写真:喜岡桜】

「比べられるのは逆に光栄」今は兄に外野守備を教えることも

 兄は岡山・創志学園高時代に佐々木朗希投手(ドジャース)らと並ぶ高校生「BIG4」と称された世代屈指の投手。ドラフト1位で阪神に入団した。同じ投手だった西は周囲から比較されることにプレッシャーや悔しさを感じ、高校では野手として勝負する道を選んだ。自分が劣ることで兄に恥をかかせたくない、兄と比較されたくないという思いも、その決断の背景にあった。

 高校、大学では比較を重圧に感じることはなかったという。「しっかり割り切って、自分のやるべきことをやっていこうと考えて取り組んできました」。兄の活躍と、自分が向き合うべき課題。それぞれを受け止められるようになった今は、こう言える。「お兄ちゃんがすごい選手なので、比べられるのは逆に光栄なことかなと思います」。

 純矢は今季から野手に転向した。同じ外野手となり、兄弟のやり取りにも変化が生まれた。「守備の面では自分の方が歴が長いので、質問されることもあります」。天然芝での打球の追い方や、打球への入り方など「(兄に)伝えることで、自分も初心に返ってやれる」。教わるだけだった関係から、助言を送り合う関係へ。「前より野球のことを喋るようになりました」と明かす。

 今秋、プロ志望届を提出しなかったのは、自分の現状を見つめた上での判断だった。「自分はまだ大学でスタメンすら勝ち取れていないレベルなので。まずは力を蓄え、選ばれる選手になれればと思います」。同期の藤森康淳外野手(4年)がソフトバンクから4位指名を受けた時には、喜びとともに、自分もいつかという思いが湧いた。「いつになるか分からないですけど、プロになれるように自分も頑張っていきたいです」。

 卒業後の進路は、まだ決まっていない。悩む中で、兄からは自分がどうしたいのかを大事にした上で「どの道に進むにしろ最後まで諦めずにやり続けろよ」と背中を押された。「そこで気持ちが救われている部分もありました」。野球を続けたい。その先に、かなえたい目標がある。「いずれ兄と同じ舞台に立つことができたらと思っています」。今度はプロのグラウンドで。兄と野球を語り合う日々は、これからも続いていく。

(横井洸太 / Kota Yokoi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY