「指名はないだろうな」早大4番が味わった“虚無感” 最後に見た光景…誓った2年後の恩返し

慶大戦で2ランを放った早大・寺尾拳聖【写真:加治屋友輝】
慶大戦で2ランを放った早大・寺尾拳聖【写真:加治屋友輝】

寺尾拳聖が8回にリーグ戦通算5号…小宮山監督「信じられなかった」

 ドラフト会議で名前を呼ばれることはなかった。胸に残ったのは、今季限りで退任する恩師への「申し訳なさ」だった。早大は7日、神宮球場で行われた東京六大学野球秋季リーグ第9週の慶大1回戦に6-1で先勝。「4番・左翼」で先発した寺尾拳聖外野手(4年)は、8回にリーグ戦通算5号となる2ランを放った。小宮山悟監督にとって最後となる早慶戦で、鮮烈な一打を届けた。

 プロ志望届を提出して迎えた10月22日のドラフト会議。しかし、最後まで寺尾の名前が呼ばれることはなかった。

「自分の中で指名はないだろうなという感じではあったので、社会人でも頑張って、2年後に選ばれるようになりたいです」

 結果は冷静に受け止めた。一方で、早大から指名選手を出せなかったことについては「申し訳ないなという気持ちでいっぱいでした」と、小宮山監督への思いを明かした。

 寺尾は3年春からレギュラーに定着。同季は打率.422、15打点を記録し、外野手部門のベストナインに輝いた。不調の時期も起用を続けた小宮山監督に対し、「ずっと使っていただいた」と感謝する。今季は夏季キャンプで左膝を負傷し、秋季リーグ戦の開幕から出遅れた。法大戦を欠場し、明大戦で代打から復帰していた。

 迎えた大学最後の早慶戦。3-1の8回1死二塁で、慶大の4番手・小宅雅己投手(1年)の直球を捉えた。鋭い打球は低い弾道のまま左翼席へ突き刺さった。リーグ戦通算50安打目となる豪快な2ランだった。「真っすぐ系を狙いながら、変化球対応でいけるかなと思っていました。角度をつけるというより、ライナーでしっかり強い打球を打つイメージでした」と振り返る。

 ベンチで見届けた小宮山監督も驚きを隠さなかった。「ダグアウトから見て、あの当たりでスタンドに入るのは信じられなかった。監督になって今まで見たホームランの中で、一番強烈だったと思います」。

 本塁打を放ってベンチへ戻った寺尾を、小宮山監督は帽子を取って迎えた。寺尾にとって初めての光景だったという。「真意は分からないです」と笑ったが、恩師の記憶にも残る一発になった。

慶大戦で指揮を執った早大・小宮山悟監督【写真:加治屋友輝】
慶大戦で指揮を執った早大・小宮山悟監督【写真:加治屋友輝】

本塁打直後には失策…監督は「全部チャラかな」

 もっとも、本塁打だけで1日を終えることはできなかった。直後の8回の守備で失策を記録。小宮山監督は「打っては良かったんですけど、エラーしてしまったので。全部チャラかなという感じですね」と苦笑いし、「本人が一番慌てていたと思いますよ」と続けた。

 大学最後の秋、目指していたリーグ優勝には届かなかった。寺尾は「本当は優勝して恩返ししたかったですけど、なかなかチームも自分も状態が上がらなくて」と悔しさをにじませた。

 それでも、大学最後の早慶戦はまだ終わっていない。「明日もしっかり勝って終われれば、チームも2位になるので」と、まずは目の前の一戦を見据えた。その先には、社会人野球を経て2年後にプロ入りするという目標がある。

「しっかり社会人でも成績を残して、プロに指名されるように頑張りたいです。大学で教わったことを生かして、プロで結果を残し、監督に恩返しできるようになりたいです」

 ドラフトで名前は呼ばれなかったが、夢が途切れたわけではない。恩師に届ける“本当の恩返し”を、寺尾は2年後のその先に見据えている。

(横井洸太 / Kota Yokoi)

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