U-18代表に見る、オランダ野球の強さの秘密 本土で何が行われているのか
東京五輪のライバルに“潜入”、カリブ海地域の選手も本土に集結?
WBCで2大会連続ベスト4入りするなど、カリブ海に位置する自治領キュラソー島出身の選手を中心に近年、野球の国際大会で存在感を見せるオランダ。本国の野球事情とはいったいどうなっているのか。オランダ王立野球・ソフトボール協会(以下:KNBSB)コーチング・スタッフ「Athletic Department」のコーチ陣事務局長への取材、U18オランダ代表の練習への“潜入”から、改めて強さの秘訣を垣間見ることができた。
オランダのU18代表は東京五輪を見据え、各チームのアカデミーに属する優秀な選手(カリブ海地域も含む)がアムステルダムの施設(日本でいうJISSのような場所)に宿泊しながら練習をしている。ただ、単なる練習ではない。約1年間かけた「セレクション」である。このような仕組みは2017年からスタート。野球好きなら耳にしたことがあるであろう、オランダの名選手を多く輩出する「キュラソー」出身の選手も全て本土に集めて練習を行っている。
これだけでも特筆すべきだが、組織を支えているのはオランダオリンピック協会から派遣されるコーチ、スタッフ陣であるという点も特徴。ヘッドコーチはメジャーリーグ・パイレーツのスカウトも兼ねている人物で、育成とスカウトのスペシャリスト。バイオメカニクスの博士号も取得している。
他にも投手コーチや打撃コーチはもちろん、メンタルコーチ、タレントコート、アドバイザーとしてサイエンティスト(大学所属の研究者)、栄養士など様々なポストが用意されており、それぞれが各ポジションを尊重しあい、連携しながら成り立っている。そして、野球選手だけでなく、女子のソフトボールの代表選手とともに練習するのだ。世界で戦うために、男女ともに練習をし、刺激し合える環境は素晴らしいものであった。また、野球経験がないトレーナーもおり、野球の技術向上のために、各分野のスペシャリストを招集している。
土日は各クラブのアカデミーに戻り、リーグ戦をこなすが、好成績を出せば、何歳でも、属するクラブのトップチームでデビューすることができる。我々が練習を見学した際、U18ナショナルアカデミーで練習をしていた17歳の選手がオランダシリーズ(日本で言えば日本シリーズ)に今シーズン初のベンチ入りを果たし、試合にも初出場した。結果は三振ではあったが、見学していたアカデミー生に夢を与えた瞬間であった。