復活を目指す鷹の160キロ右腕 再び勝利の方程式へ
2016年にチーム2位の58試合に登板、26ホールドをマーク
昨年のパ・リーグ覇者・福岡ソフトバンク。このチームの恐ろしいところは、たとえ怪我や疲労によって主力が離脱しても、それに代わる選手が現れる層の厚さである。サファテ投手を筆頭とした救援陣はチームの優勝に大きく貢献したが、実は開幕から、ある大きな存在を欠いたまま戦っていた。160キロ超の剛速球を武器にセットアッパーを務め、2016年は58試合に登板したロベルト・スアレス投手だ。
2014年にメキシカンリーグのチームに入団するまでプロ経験はなく、草野球に打ち込んでいたスアレス投手。荒削りながら魅力的な剛球が球界関係者の間で噂になり、メジャーからの注目を集めつつも最終的には福岡ソフトバンクを選んだ異色の経歴の持ち主である。2015年オフに24歳で来日すると、瞬く間に日本野球に適応。初年度の2016年シーズンに輝かしい成績を残した。
初登板は16年4月10日、オリックス戦(熊本)の8回。1イニングを2奪三振無失点と好投し、上々のデビューを飾る。その後セットアッパーに定着。最終的に、サファテ投手に次ぐチーム2位の58試合登板、リーグ3位の26ホールドをマークし、勝ちパターンを担った。遅咲きの原石が初年度から輝きを放ち、想像をはるかに超える活躍。当然のように、翌年のさらなる進化が期待された。
ところが、2017年の開幕前。母国・ベネズエラの代表として出場したWBCで右肘に異常を訴え、実戦復帰まで約1年を要する靱帯再建手術に踏み切ることに。シーズン中の復帰は絶望的となり、チームが熾烈な優勝争いを繰り広げる中、スアレスは復帰を目指してファーム施設や母国でリハビリに励むこととなった。
前述の通り、50試合以上に登板した右腕を失いながら、チームはその穴を埋めて日本一に輝いている。ただ、まだ26歳と若く才能に溢れた右腕の存在は、チームが連覇を目指す上で重要なピースとなるはずだ。2月1日から始まる春季キャンプには参加できないものの、早ければ前半戦中に実戦復帰できる見込みだという。
今のチームにはサファテ、岩崎翔、森唯斗、嘉弥真新也ら実績十分のリリーバーがいれば、虎視眈々と1軍入りを狙っている若手投手も控えている。球界屈指とも言えるブルペン陣の中で「勝利の方程式」に入れるのはほんの一握りで、誰しもがそのわずかな枠を巡り、アピールに励んでいる。
選手一人ひとりにとっては厳しい環境であるが、ハイレベルな競争はチーム力の底上げにつながっていくだろう。スアレス投手はもう一度自身の立場を確立できるか。妥協を許さない「王者」の戦いに、今年も大いに期待している。