井口監督率いる新生ロッテの挑戦 自発性から生まれるチーム力
若手のやる気を刺激し、チーム全体の意識を底上げ
今季からロッテで指揮を執る井口資仁監督は、野球界の既存の枠に囚われないアプローチで選手の自発性を刺激し、チーム力のアップを目指す。その取り組みの1つとして、現在行われている石垣キャンプでは1軍と2軍の垣根を取り払い、全体練習の開始を例年より1時間早い9時に変え、第1クールからシート打撃を始めた。
朝8時過ぎからグラウンドに次々と姿を見せた選手は、午前9時から投手(陸上競技場)と野手(メイン球場)に分かれてウォーミングアップを始める。キャッチボール、シートノック後のバントシフトで投手と野手が合流し、その後に打撃練習とブルペン投球で再び分かれ、ランチ後のシート打撃で一部投手が合流。野手の全体練習最終メニューのベースランニングが終わるのが午後2時半過ぎ。その練習量は決して少なくない。
投手36人、野手31人の大所帯。バントシフトなど投手と野手が合流する練習では、メイン球場と第2球場の二手に分かれて行われるが、この時の組み分けもレギュラーや控え、1軍や2軍の区別は一切なし。新人の育成選手・和田がメイン球場にいるかと思えば、主将の鈴木が第2球場に向かうという具合で、文字通り横一線の状態だ。
そもそも1軍と2軍を決めずにキャンプインすることにしたのは、前年の成績は関係なく、新シーズンは新しい競争から始めたいという思いからだ。この試みは若手選手、特に1軍と2軍の狭間で勝負する選手にはいい刺激となっているようだ。2013年育成ドラフト1位で入団した肘井竜蔵外野手は「すごく充実している」と目を輝かせる。
2015年キャンプ中に支配下登録された22歳は同年にデビューし、昨年は1軍キャンプに初参加。3シーズンで1軍には30試合出場した。外野の競争が激しいロッテでレギュラーを獲るには、もう一回りも二回りも成長を求められるだけに「先輩方の練習を近くで見られるだけで、受ける刺激が違います」と貪欲だ。
「練習に対する姿勢はもちろんですけど、ティー打撃のやり方だったり、技術的なところも見逃さないようにしっかり見ますね。(鈴木)大地さんや角中さんをはじめ先輩方の打撃に対する考えを聞かせてもらえるのも、すごく勉強になります。でも、人数が多い分、他人より目立たないと埋もれてしまう。持っているものを見てもらうためにも、自分の存在をアピールしようという気持ちが大きくなりました」
BCリーグ石川を経て、2016年育成ドラフト1位で入団した安江嘉純投手は、今季は初の支配下登録、そして1軍デビューを目指す。例年ならば、2軍キャンプに組み分けされるであろう25歳右腕は「毎日がすごく濃いです」と話す。
「グループ分けもバラバラなので、いろいろな方と話ができるのが本当に参考になりますね。フォームだったり、握りだったり、打者に対するアプローチだったり。1軍と2軍が別だったら話すらできなかったかもしれない方々とできるだけ話をしています。それに、特に僕みたいな育成という立場の人間は、監督やコーチに見てもらえる機会を均等に与えられることがうれしいですね。チャンスを生かせるように頑張っています」