全力疾走しなかった元気印・桑原の姿に滲むDeNAの沈滞 問われる番長の“求心力”
歓喜の逆転劇が一転、9回2死からまさかの同点2ラン被弾で落胆
■DeNA 5ー5 巨人(12日・横浜)
最下位に低迷するDeNAのムードを象徴するシーンと言えるかもしれない。12日に本拠地・横浜スタジアムで行われた巨人戦。守護神・三嶋一輝投手の痛恨被弾で5-5で引き分けた。まだサヨナラのチャンスも残っていた9回2死、ムードメーカーの桑原将志外野手は内野フライを打ち上げた瞬間、うつむいて全力疾走せず、相手の思わぬ落球にも一塁ストップを余儀なくされた。
本来なら二塁までは進めていたはず。三浦大輔監督も試合後「あそこは全力疾走しないといけないところ。コーチからも……(注意させる)。全員でああいうことをしっかりできるようにしていかないといけない」と猛省を求めた。
結局、続く神里が空振り三振してゲームセット。たとえ桑原が二塁まで進んでいたとしても、サヨナラ勝ちには結びつかなかったかもしれない。だが、走者が得点圏にいれば、相手にかかる重圧も守備位置も変わり、何が起こっていたかわからないとも言える。
そもそも、勝つべき試合だった。1点を追う8回2死一塁で、ネフタリ・ソト内野手が劇的な逆転4号2ラン。さらにドラフト2位ルーキー・牧秀悟内野手も8号ソロで続き、2点差として9回を迎えた。
ところが、三嶋が2死を取りながら、丸に右前打を許し、続く岡本にまさかの同点2ランを被弾。巨人とは今季8度対戦し、まだ1度も勝てていない(5敗3分)。三嶋は前日の同カードでも、同点の9回に登板しソロ2発を浴びて敗れたのに続いて、2夜連続の“背信”となった。
桑原は普段、人一倍の闘志あふれるプレーを持ち味としている。4月18日の巨人戦の守備で、岡本の中前の小飛球に対しダイビングキャッチを試み、後逸して三塁打にした時にも、三浦監督は「状況判断についてはコーチと話してもらうが、ああいう気持ちは大事にしたい。積極的な気持ちは消したくない」と評した。チーム内にも「結果がどうあれ、ああいうタイプの選手だから」と肯定的にとらえる声が上がった。その桑原がゲームセットの前に試合を諦めたと言われてもしかたがないプレーを見せてしまったところに、この試合をものにできなかった衝撃の大きさと、沈滞したチームの雰囲気が表れている。
就任1年目の三浦監督はこれまで、負けが込む中でも、チーム内のコミュニケーションを重視する一方、基本的に直接的な指導はコーチに任せ、それぞれの職域を尊重する姿勢を取ってきた。チームに綻びが垣間見えた今、いかにタガを締め直すのか――。ハマの番長の求心力が問われているのかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)