5位転落の西武に求められる緻密野球の復活 専門家が「怠慢」とした守備ミス
野球解説者・野口寿浩氏は隙のない野球の復活がキーポイントと見た
西武は18日のソフトバンク戦(メットライフドーム)で2-8で大敗を喫し、リーグ5位に転落した。2年ぶりのリーグ制覇へ、ロッテ・佐々木朗希投手が1軍初登板した16日(ZOZOマリン)では見過ごせないプレーがあった。それは辻発彦監督が現役時代に自ら球史に刻んだ伝説的な“神走塁”を、逆に食らう格好となった。
ロッテは2点リードして迎えた7回、1死走者なしからマーティンが中前打。ところが、中堅の金子侑司外野手は前進せずに打球を待ったため捕球が遅くなり、なおかつ返球も山なり。これを見たマーティンは一塁を蹴ったあたりから急加速し、一気に二塁を陥れた。“センター前二塁打”だ。結局、後続を抑え失点につながることはなかったが、プロとしてはボーンヘッドと言われても仕方がない。
こういうプレーがあると必ず引き合いに出されるのが、辻監督が西武内野手時代の1987年に、巨人との日本シリーズで見せた“神走塁”である。西武は3勝2敗で迎えた第6戦で、2-1と1点リードした8回、2死一塁から秋山幸二外野手(前ソフトバンク監督)が中前へヒット。センターのクロマティ外野手の返球が山なりになる傾向を事前に把握していた一塁走者の辻監督は、三塁コーチの伊原春樹守備走塁コーチの指示もあって、二塁、さらには三塁まで蹴り、ホームを奪った。これが貴重な追加点となり、西武がそのまま日本一に輝いたのは今も語り草だ。
現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で計21年間捕手として活躍した野球評論家、野口寿浩氏は金子のプレーを「怠慢以外の何物でもない」と指摘。金子はそのままフル出場したが、「黄金期の西武であれば、ああいうプレーをしたら即交代、翌日2軍に落とされていたのではないか。伝統的に隙のないチームですから」と見た。
かつてこうした緻密な野球は西武のお家芸だったが、いまや他球団もレベルアップしている。パ・リーグは1位から最下位まで6.5ゲーム差、5位まではわずか3.5ゲーム差の大混戦だ。西武はもう1度引き締め直す必要がありそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)