“背負う”エースと“背負わせたくない”指揮官… DeNAの窮状に交錯する胸中
三浦監督は「なんでもかんでも背負わせたくない」と慎重
DeNAのエース・今永昇太投手の復帰マウンドが仕切り直しとなった。今季初登板初先発する予定だった20日の中日戦(横浜)は雨天中止に。昨年10月の左肩クリーニング手術から7か月。最下位にあえぐチームの救世主を宿命づけられた左腕は、翌21日のヤクルト戦(神宮)へのスライドはせず、改めて登板日を探る。
中止決定後にリモートで報道陣の取材に応じた今永は冒頭、「こういう梅雨の時期なので、日本の四季を楽しんでいただければと思います」と笑わせた。
敢えておどけて見せたが、約2か月遅れの“開幕”へ向かう胸中は熱い。チームは11勝27敗6分で最下位に低迷。2019、20年に2年連続開幕投手を務めた絶対的エースは、力になれないもどかしさに身悶えしていたのだろう。「試合の中で無理ができるかどうかが(1軍昇格の)基準でした。できるという判断で上がってきたので、僕自身としては何の制限もなく投げられると思っています」と語った。
実際、イースタン・リーグでは5試合に登板し3勝1敗、防御率1.32の好成績。直近では今月12日の2軍ロッテ戦に先発して8回90球を投げ、3安打ゼロ封。本人は1軍復帰登板から全開モードで臨む構えだ。
しかし、首脳陣は慎重な姿勢を崩さない。三浦大輔監督は「何でもかんでも背負わせたくない。今永にとっては“開幕”なので、いろいろ考えずに自分のピッチングパフォーマンスを出してくれればいい。(起用法は)状態次第」と強調する。チームにとって待ちに待ったエースの復帰だが、何より恐ろしいのは故障の再発と長期離脱。かけがえのない存在だけに、まずは無難に滑り出してほしいのが本音だろう。
この日は試合とともに、昨季限りで現役を引退した石川雄洋氏の引退セレモニーも中止に。DeNAの球団買収初年度(2012年)から3年間主将を務めるなど、チームのリーダー的存在だった。
今永は「石川さんは言葉でなく、自分の姿勢、背中で引っ張っていく人でした。人前でネガティブな言動はしない。ネガティブに人を巻き込むことがなかった。僕の野球選手像につながっています」と並々ならぬ思い入れを明かした。投球でも言動でも、なんとかして苦境のチームを盛り上げたい――。その思いがほとばしった。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)