「ポンコツだった僕らに…」 ホークス千賀、登場曲変更で先輩左腕に届けた9勝目
同日引退試合の松坂大輔への想いも語る
■ソフトバンク 6ー0 ロッテ(19日・PayPayドーム)
ソフトバンクの千賀滉大投手は19日のロッテ戦(PayPayドーム)に先発し、8回途中1安打無失点で9勝目を挙げた。自身2度目の無安打無得点こそ逃したものの、エースらしい投球でロッテのマジック減らしを阻止。本拠地のラスト登板では、初回に流れる登場曲を「This is me」に変更。そして、憧れ、一緒に時を過ごし、投げ合った“平成の怪物”への想いも語った。
ほぼ完璧の内容で9勝目を挙げた千賀。2度目の大記録を逃したものの、試合後は「本当に勝って良かったですし、ホッとしています」と淡々と口にした。
この日は自身の9勝目だけでなく、1人の先輩左腕への想いを胸にマウンドに上がった。それが伝わったのは、初回のマウンドに立つと同時に流れた登場曲だ。使用したのは前日に戦力外通告を受けた先輩・川原弘之が登場曲として使っていた「This is me」だった。
「僕の1年目から時間外の練習もずっと2人でやってきましたし、一番お世話になった先輩。1つ上で、僕らの教育係のような存在で、ポンコツだった僕らの年代の投手にいろんなことを教えてくれました。川原さんがいてくれて今の僕があると思うので、川原さんに(ウイニング)ボールを届けられるようにと思ってマウンドに上がりました」
速球派左腕として期待されながら相次ぐ故障に苦しみ、育成契約になりながらも再び支配下を勝ち取った努力人・川原。18日には投手練習の場にスーツ姿で現れ、千賀と笑顔で会話を交わしていた。八女で自主トレも一緒に行うなど、深い絆で結ばれていた先輩に最高のウイニングボールを届けることができた。
また、登板の直前にメットライフドームでは松坂大輔投手が現役最後の登板を果たしていた。千賀が「憧れだった人ですし、野球に詳しくない人にも知られている数少ない野球選手」と語る松坂のラスト登板を「準備中の時間だったので見られなかった。これからゆっくり見たい」と録画映像で目に焼き付ける。
松坂のソフトバンク在籍時代にはリハビリで苦しむ姿も見てきた。「身体というところに対して、そこが戻って来ないと投げられないんだな、と。大輔さんでもそうなるんだなと思いました」としみじみと語った。“平成の怪物”に憧れてきた次世代投手の1人として、これからも投げ続ける覚悟だ。
(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)